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『イン・アメリカ』~映画史上いちばん美しいシーンがあります~

イン・アメリカ

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観ていただきたい方は

 

この作品は、特に親しい人を失った人、生活が苦しい家庭、頑張っているお父さん、お母さんそんな方々に見てほしいです

 

すべてが上手くいっている幸せな家庭はほとんど無いと思います

 

皆さん何かしら問題を抱えていると思います

 

別離、病気、お金、教育、夫婦関係、恋愛、進路、将来、介護、転勤、価値観、地域、学校、職場等いろいろな問題があると思います

 

作品のサリヴァン家族は特に家族との別離、失業、見知らぬ土地での生活、貧困、出産という問題に苦しんでいます

 

あなたの問題は何でしょうか?

 

このサリヴァン一家の生き方を見て、感じるものがあると思います

 

彼らの成長を見て、考える事があると思います

 

家族とどう向き合えばいいのだろうと発見することがあると思います

 

苦しいけれど、子供の成長が見れた時、幸せな一瞬だなと思います

 

頑張ってきてよかったなあ、家族がいっしょにいるってありがたいなと思うと思います

 

では、物語に入りましょう

 

アメリカに希望を抱いて

 

登場人物たち、サリヴァン一家は4人(5、6人)の家族です

 

()の人数は、物語が進むに連れて、分かってきます

 

舞台は現代のアメリカ、ニューヨークの貧困街です

 

アメリカとカナダ国境付近、女の子が語りながら、ビデオカメラで撮影しています

 

最初は小さな光のような、木漏れ日のようなものが映し出されて、その光はだんだん大きくなって、たなびく星条旗が映し出されます

 

とても希望に満ち溢れている感じです

 

やさしい光と風を感じさせてくれます

 

冒頭のシーンは、アイルランドからやって来た移民であるサリヴァン家族がアメリカ国境のゲートで入国審査を受けている所です

 

 

若い夫婦の夫ジョニー、妻サラ、10才くらいのお姉ちゃんクリスティ、5才くらい妹アリエルです

 

ジョニーは売れない舞台俳優なんです

 

それで失業して、アメリカに一家でやってくるんです

 

古いワゴン自動車に荷物を乗せてやってきました

 

お願い、アメリカに入国させて!

 

入国審査官に入国の目的を聞かれます

 

幼いアリエルはパパが失業しちゃったからと正直に言ってしまうんです

 

慌てて、サラが「バカンスです」と訂正します

 

怪しんだ審査官はもう一人の審査官を呼びました

 

つづけて審査官は質問します

 

審査官:「何人で?」

 

ジョニー:「5人だ」

 

 

ジョニーは間違えて言ってしまいます

 

実は、末っ子の男の子を亡くしているんです

 

ジョニーの心の中にはまだいるんです

 

ジョニーもサラもどことなく気持ちが上の空なんですね

 

この冒頭シーンがとても上手いんです

 

映画『チャップリンの移民』の中で、船でやってきた移民たちが、自由の女神像を見て、「これでぼくらは自由だ」と叫んで喜ぶんです

 

ですが、入国したとたん、審査官が鎖で入国を封鎖するというシーンがありました

 

すごい皮肉が効いています

 

そんなアメリカン・ドリームと厳しい現実とが対比したシーンがこの『イン・アメリカ』の中にもあります

 

よそ者への冷たさと一家の温かさとこれから引き起こす問題をそれとなく表現しています

 

審査官はこの家族を入国させるかを考えています

 

実は、お姉ちゃんのクリスティは3つの願い事を叶えることができるんです

 

アラビアの魔法のランプみたいで、詩的で面白いんですね

 

クリスティは、両親のあの自信無げな話し方じゃ入国できないと心配します

 

クリスティは、一家の未来がこの入国手続きにかかっていることを分かっているんですね

 

彼女は心の中で願い事を言います

 

クリスティの心の中:「無事に入国させて、フランキー!」

 

審査官は不信感を顔に出しながらも、姉妹のかわいさに触れて、入国を許可します

 

初めてのアメリカ、ニューヨーク

 

クリスティは愛用のビデオカメラを持って色々と撮影しているんですね

 

作品の中にクリスティのホームビデオの映像がちらほら流れます

 

初めて見るニューヨークの電飾看板、高層ビル、人混み、フリスビーを投げて遊ぶ家族

 

お父さんは俳優なので、姉妹と遊ぶときは、ゾンビになったり、誘拐犯になったり、強盗で人質を取ったりし子供を楽しませるいいお父さんです

 

このクリスティのホームビデオが温かな雰囲気をいっそう醸し出しています

 

アリエルは無邪気にニューヨークの歩いている人に手を振ります

 

さて、ニューヨークでアパートを借りますが、この家族はお金をあまり持っていないんです

 

治安の悪いところの古いアパートしか借りることができません

 

アリエルがエレベーターを見つけ、はしゃぎます

 

ですが、このアパートのエレベーターは昔に壊れていて、階段しか使えません

 

上の階から男が叫んだりしていて、いかにも治安が悪そうなんです

 

ボロボロの階段と手すりと壁を、カメラは鉄のフェンス越しから写します

 

アリエル:「なぜ、あの人は叫んでるの?」

 

クリスティ:「幽霊を見たのよ」

 

何個もの厳重な鍵を開けて、一家は新居にたどり着きます

 

新居の部屋に入るとそこにはたくさんの鳩が住んでいました

 

アリエル:「この鳩飼ってもいい?」

 

無邪気にお父さんに言います

 

全然、悲壮感が漂わない所がいいですね

 

クリスティは両親の様子を気にしながら、部屋を撮影しています

 

ジョニー:「ひどい所だ」

 

サラ:「修理すれば住めるわ」

 

ジョニー:「その費用がどこにある?家賃の工面も大変だ」

 

サラ:「車を売ればいいわ」

 

ジョニーとサラで改装を始めます

 

その間クリスティとアリエルはスケートしながら楽しくみんなで我が家を作ります

 

「うるさい!アイルランド人!」なんて近所に言われながらも頑張ります

 

日本の映画のように「こんなに貧しいんだ。悲しいんだ。苦労しているんだ。」みたいな押し付けな所がないんですね。

 

悲しみもユーモアを混ぜて、楽しくさせているんです

 

悪戦苦闘!ニューヨークの猛暑

 

サラは教師なんですが、近くには職がなく、しかたなくアイスクリーム屋で働きます

 

ジョニーはオーディションを受けてまわるのですが、英国訛りがあり、なかなか受かりません

 

季節は夏、猛暑なんですね

 

ジョニーはオーディションの練習をしながら、姉妹の面倒を見ています

 

でもなかなか集中できなくて、シャワーに長く居すぎたアリエルは熱を出してしまいます

 

アリエル:「足がプルーンみたいになって力が入らないよ」

 

とてもかわいい表現ですね

 

サラはあまりの暑さで階段の途中で休憩を取ります

 

それを見たジョニーは一念発起して中古のエアコンを買います

 

50キロくらいのエアコンを汗だくになりながら、担いで5階の家まで運びます

 

さあやっと家族が涼めると思ってプラグを挿そうと思ったら、形が違うんですね

 

がっかりして、プラグを買いにいくんですが、24セントお金が足りません

 

たった24セントですが店主はマケてくれないんですね、よそ者ですから

 

サラのアイデアでジョニーは空き瓶を売って、プラグを手にいれます

 

ジョニー:「これで2ドルだ、ミスター・アメリカン・ドリーム!」

 

店主に言い放ちます

 

ジョニーは家族のために一生懸命ですね

 

コンセントにプラグを挿し、エアコンからは待望の冷風が出てきて、皆で涼みます

 

ですが、エアコンがショートしてアパート中のブレーカーが落ちちゃうんです

 

やけになったジョニーは預金を下ろして家族を連れて涼しい映画館に映画を見に行きます

 

その映画は『E.T』でした

 

アリエルは月に自転車で帰っていくE.Tを見ます

 

アリエル:「天国に行くの?フランキーと同じね」

 

亡き息子を幻影を追って

 

フランキーって言うのは、数年前に亡くなった末っ子の男の子です

 

かわいそうに階段から落ちて、腫瘍が出来て亡くなっちゃうんです

 

家族はフランキーのことが忘れられないままで暮らしています

 

ジョニーが子どもたちと遊んでいます

 

ジョニーはゾンビのマネをして、姉妹を襲う遊びをしている途中、急に悲しみがやってくるんですね

 

涙が出てきて、フランキーを思い出しちゃって、もう遊べないんです

 

遊びを止めてしまったお父さんのことを姉妹はちゃんとわかっています

 

アリエルもクリスティもうつむいてしまいました

 

サラ:「どうしたの?続けて」

 

ジョニー:「あの子はどこだ?フランキーはどこだ?」

 

サラ:

「遊びを続けて、ジョニー」

 

「演技だと思って、お願い!」

 

ジョニーは悲しみを押し殺して遊びを続けます

 

みんな寂しいんですね

 

サラもまた、フランキーのことが忘れられません

 

夫婦の会話の中で

 

サラ:

「あなたの目がフランキーに似ているから、ちゃんと見ることが出来ないわ」

 

「責めてるのね、階段からフランキーが落ちた時、抱きかかえられなかったことを」

 

でも、こんなに貧乏で、家族が死んで悲しくても、この作品はユーモラスなシーンを織り交ぜて、温かさを演出しています

 

やがて、慣れないニューヨークでも、姉妹はどんどん成長し、ニューヨークの環境になじんでいきます

 

アイスクリーム屋の同僚マリナが仲良くしてくれて、姉妹を預かってくれたりするんですね

 

初体験のハロウィン、マテオとの出会い

 

熱波の夏が過ぎ、落ち葉が道路を埋め尽くす秋が来ます

 

季節感を出して、観客に時の経過を思わせ、家族が続けている頑張りとこの家族どうなったのだろうと思わせる演出がうまいですね

 

アイルランド人のこの一家はカトリック教徒なので、両親は子供をカトリックの学校に行かせます

 

そのためにジョニーは夜、タクシー運転手のアルバイトをします

 

立派な立派なカトリック学校の服をクリスティとアリエルに着せてあげるジョニーとサラ

 

必死に働くことが、子供の幸せに繋がっていると感じる綺麗なシーンです

 

僕たちも子供の晴れ姿に日頃の疲れや苦労なんか吹っ飛びますよね

 

ついこの前まで、移民としてアメリカにやって来た姉妹たち

 

アメリカ国歌が流れ、アリエルは国歌に忠誠を誓うセリフを言います

 

アリエル:「なぜ、『ホセ』のことを歌うの?」

 

クリスティ:「聞き違いよ。『ホセ』じゃない。『皆の者』(オーセイ)よ」

 

二人はアメリカという国にすっかり馴染み、しっかり育っています

 

すり足で落ち葉の絨毯を歩くアリエル

 

昼寝をしているジョニーにクリスティは食事をつくってあげます

 

やがてハロウィン祭がやってきます

 

ハロウィンをはじめてアメリカで体験するクリスティとアリエル

 

手作りの衣装を来て、近所にお菓子をねだりに行きます

 

でも、住んでいる所の治安がとても悪いんですね

 

サラ:「周りに住んでるのはジャンキーか女装オカマしかいないわ」

 

皆どこも警戒してドアを開けてくれません

 

とても残念そうなクリスティとアリエル

 

そこに、ドアに「入ってくるな!」と粗暴なペンキの字で描いてある家がありました

 

クリスティとアリエルは怖がりながらも、必死にドアを叩きます

 

クリスティ&アリエル:「トリック オア トリート!トリック オア トリート!」

 

ここは、マテオという絵描きの男の家でした

 

部屋の暗所で写真の現像をしていたマテオ

 

サリヴァン一家が来た時から、部屋の中でわめき散らして叫んだり、部屋中の物を投げる凶暴な男です

 

マテオ:「誰だ!」

 

クリスティ:「部屋に誰かいる!」

 

マテオ:「麻薬なんかないぞ!」

 

アリエル:「もう一度ノックをしよう」

 

マテオ:

「失せろ!」

 

「何の用だ!」

 

マテオはドアを開けて、凶暴に言います

 

アリエルは驚き怖がりながらも、勇気を振り絞ってお菓子をねだります

 

アリエル:「こんにちは、トリック オア トリート!」

 

マテオ:「上の階の子か?」

 

クリスティ:「そうよ」

 

マテオ:

「ハロウィンか!」

 

「故郷は?」

 

クリスティ:アイルランドよ」

 

マテオ:「お菓子をねだりにアメリカに?」

 

クリスティ:「そうよ」

 

マテオ:「お入り」

 

マテオは自分の家にクリスティとアリエルを招き入れます

 

マテオは玄関のドアを閉める時に、周りに誰か居ないか確認します

 

不安を呼び起こす効果音が入っています

 

このシーンは意地悪ですね

 

ホントに入って大丈夫なの?って観客に思わせていますね

 

様子を見ていた、ジョニーとサラ

 

マテオとサラは目が合います

 

マテオは大丈夫だよとジェスチャーします

 

ジョニー:「大丈夫か?あの男」

 

サラ:「心配ないわよ」

 

家に招き入れられたクリスティとアリエル

 

部屋の中は絵と画材だらけです

 

アリエル:「名前は何でいうの?」

 

マテオ:「マテオだよ」

 

アリエル:「私はアリエルよ」

 

クリスティ:「私はクリスティ」

 

アリエル:「この絵は何?お化け屋敷みたい」

 

輪郭が黒くて太い暗い絵です

 

マテオ:

「お化けは出るが怖くないよ」

 

「魔法の家だ」

 

アリエル:「フランキーも魔法を信じてた」

 

マテオ:「誰のことだい?」

 

アリエル:

「弟よ。でも死んだの」

 

「2歳の時、階段から落ちて」

 

クリスティ:

「助かったと思ったけど、脳の中に何かができて」

 

「それが脳腫瘍で3年間大きくなり続けた」

 

「悪性だったの」

 

なんと、マテオはフランキーの話に涙を流して泣きます

 

マテオの肩に手を寄せるアリエル

 

アリエル:

「泣いてるの?」

 

「いいの。彼は天国へ行ったから」

 

マテオはアリエルを優しく抱きかかえます

 

マテオ:「何かプレゼントをあげなきゃね」

 

マテオは冷蔵庫を開けます

 

そこには大量の薬がありました

 

しまった!と思ったマテオはすぐに閉めてクリスティと顔を合わせます

 

マテオ:

「何もない。何もない。何もない。」

 

「あったぞ、これはどうだ?」

 

「マテオのお宝だ」

 

小瓶に貯めていた小銭を見つけました

 

クリスティ:「悪いわ」

 

マテオ:「いいんだ。入ってきた幸運の天使は追い返せない」

 

そして、小瓶に貯めていた小銭をクリスティにプレゼントし、「ハッピー・ハロウィン!」と言って姉妹と仲良くなりました

 

この瞬間、マテオの心が救われたのだと思います

 

マテオは人との関わりがほしかったのですね

 

ジョニーとサラは、マテオを夕食に招待します

 

食べた食事の中に金貨を見つけたマテオ

 

アリエル:「おめでとうマテオ!幸運の印よ!すごい!お金持ちになるのよ」

 

パンを食べたマテオはまたその中に指輪を見つけました

 

クリスティ:「おめでとう!結婚するのよ」

 

マテオと姉妹たちはとても仲良しになりました

 

 

サリヴァン一家に赤ちゃんが!

 

マテオはお腹に子を宿した母の絵を描いていました

 

ジョニーとサラはお腹に子供を授かっていました

 

マテオ:「すべて上手くいくよ。お腹の子供が君たちに幸運をもたらしてくれるよ」

 

実はお腹の赤ちゃんがあまり動かないんです

 

病院での検診の時、ジョニーとサラは産婦人科医に告げられます

 

このまま赤ちゃんを産めば、母親の命の保証はない

 

サラはクリスティとアリエルに話します

 

サラ:「あなたたちもロバのように昼も夜も蹴ったのよ」

 

クリスティはビデオカメラで撮影します

 

不安そうなジョニーの顔と後ろの家族のスケッチを写します

 

スケッチには『フランキー』と書いてありました

 

このビデオカメラの映像を通して、クリスティの意識や気持ちも乗せているんですね

 

クリスティはサラとジョニーをとても心配しています

 

ジョニーは悲しくてお腹の中の赤ちゃんが蹴ったと嘘をつけませんでした

 

サラの命が心配なジョニーは赤ちゃんを産もうとするサラと口論になります

 

そして堪らず家を飛び出したジョニーは、マテオに八つ当たりしてしまいます

 

ジョニー:「お腹の子が幸運をもたらすなんて、適当なこと言いやがって!」

 

マテオ:「君は信じていないんだ」

 

ジョニー:

「何を?神か?」

 

「俺はあの時祈った。『あの子の代わりにおれの命を』と」

 

「でも神は両方を奪った。」

 

「今の俺は肉体だけ。俺はゴーストだ。存在していない」

 

「何も考えられず、笑いも泣きもできず、感じることもできない!」

 

「そういう俺になってみたいか?」

 

マテオ:

「君と代われるなら」

 

「それでも、俺はお腹の子を愛してる。」

 

「君のことも愛してる。」

 

「美しい奥さんと娘たちを愛している。」

 

「君の怒りも愛している。」

 

「命あるすべてのものを愛している」

 

マテオは心の底からジョニーたちを愛していたんですね

 

そこでジョニーはマテオの命が長くないことを知ります

 

ある日ジョニーはサラに言います

 

ジョニー:「ずっと怖かった。もうだめだ。もう誤魔化しきれない」

 

サラ:

「生きることが幻想みたい。」

 

「この暮らし、息をしているのも幻想みたい」

 

「でも子どもたちのために幸せを装って」

 

ある日、男が演劇のセリフを練習していました

 

男:

忍苦の冬がやっと去り、ヨーク家の太陽が輝く夏をもたらす。」

 

「一族の上に垂れ込めていた暗雲はリュートに合わせて踊っている」

 

ジョニーの葛藤

 

そんな折、マテオが階段で倒れ、アリエルとクリスティが駆けつけます

 

アリエル:「レモンのドロップよ。なめると魔法のように治るの」

 

マテオ:

「本当かい?」

 

「んー。俺も助かったようだ。」

 

冬になり、クリスティのホームビデオには雪で遊ぶ家族とマテオが写っています

 

雪をジョニーに投げつけるマテオの楽しそうな笑顔に癒やされます

 

マテオは最後にいい思い出を残そうとしているのでしょうか?

 

疲れて息が切れるマテオにジョニーは寄り添います

 

マテオ:「フランキーの話をしてくれるかい?」

 

ジョニー:「勇者だった。」

 

マテオ:「マサラ、マッセーラ」

 

ジョニー:「どういう意味だ?」

 

マテオ:「恐れず、対岸を渡る者」

 

ジョニー:「何の対岸だ?」

 

マテオ:「この世界...」

 

マテオはどんどん病状が悪くなります

 

ある日、マテオのお見舞いに行ったサリヴァン一家

 

心配そうなアリエルを見て、マテオはアリエルを手招きして呼び寄せます

 

マテオ:「秘密を言うけど、誰にも言わないと約束できる?」

 

アリエル:「ええ、言わないわ」

 

マテオ:

「俺はエイリアンなんだ。E.T.のようにね。」

 

「別の惑星から来て、地球の空気が肌に合わないんだ。」

 

「気温も俺には暑すぎる」

 

アリエル:E.T.のように帰るの?」

 

マテオ:「そう、お家に帰る」

 

アリエル:「いつ?」

 

マテオ:「もうすぐ」

 

アリエル:「私にサヨナラを言う?」

 

マテオ:「言うよ」

 

アリエル:「約束して」

 

マテオ:「ああ、約束する」

 

アリエル:

「赤ちゃんが生まれるの。

 

「何かいい名前ある?」

 

「あなたの名前をつけるわ。」

 

いよいよ出産の日が近づいてきました

 

病院の事務員は、「金曜日には5000ドル払ってください」と言います

 

アリエルが心配します

 

アリエル:「入院費って高いんでしょ?」

 

クリスティ:「ビデオカメラ売る?」

 

ジョニー:

「まさか、売るもんか」

 

「そんな心配するな。パパが何とかするよ」

 

何とも健気ないい子どもたちです

 

二人の就寝の時に

 

アリエル:「お祈りは?」

 

クリスティ:「私が言うわ」

 

アリエル:「パパ、ひざまずいて」

 

ジョニー:「パパはひざまずかない」

 

アリエル:「ママはひざまずくわよ」

 

ジョニー:「パパは違う」

 

 

ジョニーはフランキーが死んでから、神を憎み続けているんですね

 

ジョニーにはいつも心の平穏がありませんでした

 

サラの思い

 

そしてついにサラが赤ちゃんを産む時が来ました

 

難産の末、赤ちゃんは生まれました

 

しかし赤ちゃんには輸血が必要な危険な状況でした

 

看護婦はすぐに赤ちゃんを集中治療室に連れていきました

 

出産後のサラは興奮し情緒不安定でした

 

サラはパニックのあまり、なだめるジョニーにひどいことを言ってしまいます

 

サラ:

「輸血の血は汚染されているってマテオが言ってたわ」

 

「悪い血をやらないで」

 

「悪い血を輸血したから、フランキーは死んだのよ」

 

ジョニー:「新しい赤ちゃんだよ」

 

サラ:

「柵を越えようとして落ちた。」

 

「なぜあんな柵をしたの?」

 

「私の赤ちゃんを奪わないで!」

 

「あの子はどこ?フランキーよ」

 

ジョニー:「あの子はもういない」

 

サラ:

「あの子があの柵を越えた。あなたのせいよ。柵を立てたから。」

 

「あの子はどこ?」

 

「私のフランキーは?」

 

ジョニー:「落ち着くんだ、サラ」

 

サラ:

「あなたのせいで階段から落ちた。なぜ柵を外さなかったの?」

 

「お願いだから、赤ちゃんに合わせて。」

 

「私から取り上げないで」

 

ジョニー:「取り上げないよ」

 

サラ:「赤ちゃんを死なせないで」

 

ジョニー:「約束する」

 

サラ:「もし死んだら、私も死なせて」

 

サラは今まで必死に堪えてきたんですね

 

出産で押し殺してきた気持ちをで一気に吐き出してしまいました

 

それがよく分かるシーンです

 

クリスティの思い

 

クリスティが赤ちゃんの輸血の血を提供をすると言いました

 

よく言ってくれたとクリスティを褒めるジョニーにクリスティは言います

 

クリスティ:

「私を子供扱いしないで。フランキーが死んでから1年、私が家族を支えてたのよ。」

 

「私の弟だった」

 

「なぜか弟は死んで、私は生きている」

 

「ママは息子を亡くして泣いた。だけど弟だもの私も泣いたわ。独りの時に。」

 

「毎晩フランキーに話しかけた。」

 

アリエル:「本当よ」

 

クリスティ:「毎晩話しかけたけど、本当は自分にだったの」

 

クリスティも辛かったんですね

 

彼女も気持ちを押し殺していました

 

クリスティはみんなで乗り越える覚悟を人一倍持っていました

 

日本の映画で『ふたり』という作品があります

 

しっかり者で我慢強いお姉ちゃんと自由奔放な妹

 

周りの人は自由奔放な危なっかしい妹の方をとても心配するのですが、

 

実はしっかりものの姉の方が色々な悩みを溜め込んでいたんですね

 

姉の死後、それが分かってくるんです

 

クリスティもそんなお姉ちゃんです

 

マテオと赤ちゃん

 

ジョニーはマテオの病室にやって来ました

 

昏睡状態のマテオが眠っています

 

ジョニー:

「息子が死んだ時、俺は神を呪い二度と涙など流さないと誓った」

 

「だからもう泣けない」

 

「でもここへ来たら、君が目覚め、手を握ってくれて泣けるかと」

 

「そうすりゃ赤ん坊は助かりすべてが良くなる」

 

「頼みは奇跡だけだ」

 

ジョニーは神を信じないけれど、マテオには心を許しているんですね

 

家族には弱さを見せたくないつらいジョニーの気持ちがわかります

 

イン・アメリカ』の登場人物は堰を切ったように心の中の感情が発露します

 

イングマール・ベルイマン監督の『秋のソナタ』のようです

 

苦しみか、うなされているのか、聖なる言葉かをマテオは口にします

 

すると、先程まで身動きしなかった赤ちゃんが元気に泣き出しました

 

赤ちゃんが元気になったのを待っていたかのように、マテオは亡くなりました

 

この作品ではマテオは生まれてくる赤ちゃんの身代わりなんですね

 

サリヴァン一家にお礼のプレゼントを渡すかのように旅立って行きました

 

病院の治療費は300万ドルまで膨れ上がっていました

 

しかし、何とマテオが全額支払っていました

 

赤ちゃんはマテオ・サリヴァンと名付けられました

 

アリエル:「約束したのに。サヨナラを言わななかった」

 

アリエルはマテオが死ぬ時にさよなら言ってくれるって約束したのにと悲しみます

 

赤ちゃんの退院パーティーが開かれましたが、アリエルだけは寂しそうでした

 

悲しみを乗り越えるサリヴァン一家

ニューヨークのきれいな夜景を見ながらクリスティとジョニーは話します

 

ジョニー:「空に何が見える?」

 

クリスティ:「満月よ」

 

ジョニー:「他には?」

 

クリスティ:「お星さまかな」

 

ジョニー:

「マテオは見えない?」

 

「自転車で月の前を横切って、サヨナラを言いながら手を振ってる」

 

「アリエルに教えよう」

 

クリスティ:「アリエル!見て。マテオが自転車で月の前を横切っているわ」

 

アリエル:「どこ?」

 

ジョニー:「お前に手を振ってる」

 

アリエル:「嘘!」

 

ジョニー:「あそこだよ!」

 

クリスティ:「月の前を飛んでるわ。見えない?」

 

アリエル:「何も」

 

ジョニー:「お前にサヨナラと手を振ってる。約束通りにね」

 

アリエル:「本当だ。サヨナラ、マテオ!」

 

ジョニー&クリスティ:「サヨナラ、マテオ!元気でね」

 

アリエル:「マテオ!フランキーによろしくね!」

 

クリスティ:「パパ、フランキーにもサヨナラを言って!」

 

ジョニー:「何?」

 

クリスティ:「フランキーにも!」

 

ジョニー:「さよなら、フランキー」

 

クリスティ:「聞こえないわ」

 

ジョニー:「さよなら、フランキー」

 

ジョニーは涙を流しながら呼吸をしました

 

アリエルはジョニーの頭を撫でました

 

そこで、優しい表情のマテオや笑顔のフランキーがホームビデオに流れます

 

アリエルは幼いけれど、ちゃんとマテオの死に立ち向かいました

 

クリスティの心の中:

「悪性腫瘍に耐えてフランキーは笑顔を見せた。」

 

「パパも同じように自分に打ち勝って涙を見せた。」

 

「カメラはもう切ろう。」

 

「このフランキーはもう見たくない。」

 

「私の顔を描ける?フランキーの面影もそれと同じ。」

 

「私の頭に永遠に焼き付いてる。」

 

「現実の世界に戻ったらフランキーに言おう。『お願いだから私を自由にして』と」

 

クリスティはお父さんにフランキーのことを忘れると約束させました

 

このクリスティのたくましい表情に心打たれます

 

クリスティは成長したんですね

 

家族はやっとのことで悲しみを乗り越えました

 

映画史上最も美しいシーン

 

カトリック学校の音楽祭の時に、クリスティはきれいな声でイーグルスの『デスペラード』を歌います

 

その歌声とともにクリスティが撮影した家族のホームビデオが挿入されています

 

僕は映画のシーンでこんなに泣ける所を今まで見たことがありません

 

クリスティの家族への愛情、クリスティが家族を見守ってきたと分かるシーンです

 

誰かを諭す歌、見守る歌、包み込むような歌です。

 

~『デスペラード』~

Desperado,

君ってどうしてそうなんだ

 

Why don't you come to your senses?

そろそろ気付いてもいい頃なんじゃないかな?

 

You been out ridin' fences for so long now

いつまでもフェンスの上で座り込んだままで

 

Oh, you're a hard one

本当に頑固者だな

 

But I know that you got your reasons

君にしか分からない理由もあるんだろうけどさ

 

These things that are pleasing you

悪気なく良かれと思ってやっていることが

 

Can hurt you somehow

結局は君自身を傷つける結果になることもあるんだから

 

Don't you draw the queen of diamonds boy

見た目だけのダイヤのクイーンだけは引いちゃダメだよ

 

She'll beat you if she's able

きっと彼女は君を脅かす存在になるから

 

You know the queen of hearts

ハートのクイーンにしとくべきだってもう分かってるんだろう

 

is always your best bet

君にとっての最高の相手になるはずさ

 

Now it seems to me, some fine things

今、君のテーブルには

 

Have been laid upon your table

十分なカードが揃ってるように見えるのに

 

But you only want the ones that you can't get

君は手に入らないものばかり求めたがるんだ

 

Desperado, oh, you ain't gettin' no younger

分からず屋だな、君はもう決して若くなんてないんだから

 

Your pain and your hunger,

今感じてる痛みや飢えは

 

they're drivin' you home

懐かしい記憶ばかりを連れてやってくるんだろうね

 

And freedom, oh freedom well,

自由、自分らしさなんて

 

that's just some people talkin'

確かにそんなことをいう奴もいるだろう

 

Your prison is walking through this world all alone

君はそんな檻に閉じ込められたままでこの世界を独りで生きていくのかい

 

Don't your feet get cold in the winter time?

君の両足はちゃんと冬の寒さを感じられているかい?

 

The sky won't snow and the sun won't shine

空からは日差しも注がれない雪さえも降らない

 

It's hard to tell the night time from the day

昼と夜の区別もつかないような状況で

 

You're losin' all your highs and lows

君は人生の最高の瞬間も最低な瞬間さえも味わえずに生きているのさ

 

Ain't it funny how the feeling goes away?

そんな何もかもを捨てて生きていくなんて何かおかしいって感じないのか?

 

Desperado, why don't you come to your senses?

君ってどうしてそうなんだ?そろそろ気付いてもいい頃なんじゃないか?

 

Come down from your fences, open the gate

そろそろそこから降りてここまで歩み寄ってこいよ

 

It may be rainin',

雨が降るかも知れない

 

but there's a rainbow above you

けど君の上にもいつか虹がかかるはずさ

 

You better let somebody love you

(Let somebody love you)

君が誰かに愛されて生きていくのもいいんじゃないかって思うんだ

 

You better let somebody love you

君も誰かに愛されて生きていくべきだって思うんだ

 

Before it's too late

手遅れになってしまう前に

 

この歌詞がこの映画の作品の主題をすべて物語っています

 

クリスティは両親が心の奥底でフランキーのことを忘れないでいるのを感じ取っているんですね

 

そのことがこの家族の重荷になっていました

 

自分が家族のために頑張らなきゃと思い始めたんですね

 

だから、クリスティは3つの願い事を家族のために使うことで家族を支えてきた

 

クリスティはこの願い事を死んだフランキーのプレゼントと思い込んでいました

 

クリスティもまた、フランキーの死から抜け出せないでいなかったんですね

 

心の中で死んだフランキーと会話しているんですね

 

とても家族思いのいいお姉ちゃんです

 

そして、クリスティはホームビデオからフランキーの映像を消して物語は終わります

 

映画は終わりましたが、エンドロールがすべて小文字なんですね

 

僕ははじめて見ました

 

この作品は子どもたちが主役だよと言っているようです

 

子どもたちの両親への思いがつまったいい作品でした

 

終わりに

 

僕がこの作品をあなたにおすすめする理由は

 

一つは登場人物たちがアメリカではめずらしく下流階級なんですね

 

特別な才能がある人ではなく、特殊能力のない一般の人なんですね

 

何かを成し遂げて、成功したというものでもありません

 

その代わりに精神的な成長がくっきり現れて、いっそう感動を呼ぶんですね

 

観客に自分にも身近な出来事だと思わせてくれます

 

日常のよくありそうな苦労話です

 

リアリティがあり、人情的なイタリア映画のようですね

 

テーマだけで言うと、日本の映画に近いものがあります

 

もう一つは子どもたちの可愛さですね

 

この子たちのためなら、どんな辛いことだって頑張れると思わせる所です

 

お父さん、お母さん世代なら共感できますね

 

そして、その他には、アメリカが移民という存在をどう認識しているのかが分かる作品です

 

アメリカは先住民を除いては、アメリカン・ドリームを持って新大陸にやってきた人たちの国です

 

この作品では、現在住んでいる人たちは、異国から夢を持ってやってきた人たちを、どのように迎えなければならないかを、マテオを通じて訴えていると思います

 

夢を持ってやって来る移民にもっと寛容になれ!親切にしろ!夢、チャンスは平等であるべきと言っているようです

 

というわけで、『イン・アメリカ』いい作品ですよ

 

観ないと損しますよ

 

それではまた、次回の作品でお会いしましょう

 

サヨナラ

 

関連作品

 

チャップリンの移民』 チャールズ・チャップリン監督

『ふたり』 大林宣彦監督

秋のソナタ』 イングマール・ベルイマン監督

 

 

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