- 00.はじめに
- 01.安らぎの羽根
- 02.脚装具
- 03.無償の愛
- 04.境界知能
- 05.エルヴィス・プレスリー
- 06.最愛の人、ジェニー
- 07.覚醒
- 08.ジェニーの家庭環境
- 09.一期『多』会のはじまり
- 10.アラバマ大学の黒人入学
- 11.女子寮の夢
- 12.ケネディ大統領
- 13.入隊
- 14.風に吹かれて
- 15.戦場へ
- 16.戦闘
- 17.ダン小隊長の絶望
- 18.栄誉勲章と反戦運動
- 19.生還の再会
- 20.ジョン・レノン
- 21.ダン小隊長の生活
- 22.ピンポン外交
- 23.友との約束
- 24.エビ捕り船
- 25.希望の戦場
- 26.感謝
- 27.母の遺言
- 28.やすらぎのForest
- 29.前に進むために
- 30.胸を張って
- 31.結(むすび)
- 32.ジェニーの運命、フォレストの使命
- 33.終わりに
- 34.関連作品
00.はじめに
~《主な登場人物》~
フォレスト・・・
主人公。境界知能。母子家庭。母の愛情を受けて育つ。
フォレストの母・・・
夫はいない。『無償の愛』の人。
ジェニー・・・
性虐待児。片親。父親はアルコール中毒。
バッバ・・・
陸軍時代の友人。一家はエビで生計を立てている。バッバ自身もエビ漁師になりたい夢を持つ。
ダン・・・
フォレストの上官。小隊長。脚を失い障害者となる。
~《誰かに伝えたい名セリフ》~
☆フォレストの母:「そういう時が来たのよ。そういう時がね。いいわね。死を怖がらないで。生の一部なんだから。誰も逃げられない運命なの。私がお前のママになったように。私なりに努力したわ。自分の運命は自分で決めるの。神様の贈り物を生かして。それは自分で見つけるのよ。人生は『チョコレートの箱』。食べるまで中身は分からない」☆
1:38:40~1:41:20
~背景:変わらない愛情を息子に向けるフォレストの母の臨終の場面。最後の愛情として『運命とは』『人生とは』をフォレストに諭します。~
~《あなたに観せたい美しいキャメラシーンPART1》~
☆フォレストはベトナムから帰還します。音信不通だった片思いのジェニーが反戦集会の何万人もの会場から声をかけてきました。そこはリンカーン記念堂のリフレクティング・プール。ジェニーは大きなプールに入水してフォレストの無事を喜んで、フォレストと抱き合います。何万人の人々に拍手を贈られた再会のシーン☆
1:03~1:07:40
~《あなたに観せたい美しいキャメラシーンPART2》~
☆エビ漁で大儲けしたフォレストとダン。夕焼け空の下、ダンはフォレストに戦場で救ってくれたことの礼を言います。名誉の戦死をできず、両脚を失った生活に助けられたことを恨んでいました。そして社会を憎んでいきていました。嵐の中の漁でダンは再び生きる希望を取り戻しました。礼を言った後、ダンは車椅子から降りて、海に飛び込みます。それは嬉しそうなシャチのように優雅に泳いでいました。暖かな陽光がとても綺麗な海のシーンでした。☆
1:37:35~1:38:20
01.安らぎの羽根
冒頭シーン、一枚の白い鳥の羽がゆらゆらと上空から舞い降りてきます。
ゆっくりとゆっくりと。
どこに落下するか分かりません。
風や空気の抵抗をうけて、右へ左へまた再び上昇したりと自由気まま。
あるがままの偶然に身を預けて、気持ちよさそうにゆらゆらと落下しています。
その美しい羽の旋回するリズムに合わせて、とてもやさしいピアノが奏でられます。
バックの背景がどんどんと変わってきて、何だろうかと不思議な世界に誘われている気分です。
「こっちにおいでよ。面白いものをみせてあげる。これが人間っていう生き物だよ、ほら。」
とでも言っているようです。
その羽は一度、通行人の肩に留まりそうになりますが、また風に乗り、車のフロントを撫でるように移動します。
するとその羽は一人の男の使い古びたナイキのスニーカーに身を寄せるように留まりました。
この男と何かに共鳴するように。
穏やかでどこか心が癒やされるような、森に囲まれたバス停。
人が集まり、別れ、再会する場所。
そこでは喜怒哀楽が自然と生まれる場所。
人生の縮図みたいな所ですね。
男はきれいな羽を拾い上げ、愛用の絵本に挟み込みました。
男が座っているベンチの隣に女性のナースがやってきました。
ナースは雑誌を読み始めます。
フォレスト:
「やあ、僕はフォレスト・ガンプ」
「チョコレートどうです?」
フォレストはチョコレートの箱をナースに差し出します。
ナースは首を振りました。
フォレスト:
「僕は150万個食べられる」
「ママは言ってた。『人生はチョコレートの箱みたい』って」
「食べるまで中身は分からない」
フォレストはナースの靴を指さして言いました。
フォレスト:
「はき心地がよさそうだ」
「1日歩き続けても足が痛くならない」
「僕もそんな靴が欲しい」
ナース:「痛いわよ」
フォレスト:
「ママは言ってた『靴で人がわかる』って」
「どこから来て、どこへ行くか」
「僕もたくさんの靴をはいた」
「最初の靴を一生懸命思い出してみよう」
「ママは言った『好きな所へ』」
02.脚装具
そうして、フォレストは目を閉じて、フォレストの幼少時代に遡ります。
フォレストのナレーション:「『これは魔法の靴よ』」
フォレストは生まれつき、背骨が曲がっていて、真っ直ぐに歩くことができませんでした。
そこで医者は脚装具をフォレストの両足に取り付けました。
主治医:
「フォレスト、目を開けて歩いて見ろ」
「どうだ?」
「脚は強い。何も問題はありません」
「背骨が政治家のようにゆがんでる」
「これでまっすぐになる」
フォレストのナレーション:
「ママは僕に南北戦争の英雄、ネーサン・フォレストの名を付けた」
「血がつながってるとママは言ったが、彼はKKKというクラブを作った」
「頭巾(ずきん)とシーツをかぶって、幽霊のマネみたいな事をする連中だ」
「馬にまでシーツをかぶせた」
「とにかく、それが『フォレスト・ガンプ』の由来だ」
「『人間は馬鹿なことをする』と戒めるため、ママは僕を『フォレスト』と名付けたらしい」
《クー=クラックス=クラン/KKK》
1865年に南北戦争が終わって一年もたたないころ、テネシー州プラスキーという田舎町で、戦争に敗れて故郷に帰ってきた南部同盟の若い復員兵6名は、戦争中の思い出を語りあったり、戦友どうしの交友を保つため、社交クラブをつくり、サークルを意味するギリシア語の「ククロス」とスコットランド高地人の一族を意味する「クラン」にちなんで、クー=クラックス=クランと命名した。しかし、解放奴隷と呼ばれた黒人や、北部から流れてきたならず者で南部は混乱状態になったため、この団体は彼らの家庭や妻子を守るための自警団に成り代わった。同時に戦争で失った南部の自主権を回復しようという目的をもつ秘密結社になったのである。彼らは共和党の南部再建計画に強く反対し、白人優越主義を掲げ、白い頭巾で顔を隠し、白装束で、黒人を襲うようになった。夜間になるとまるで幽霊のような姿で現れる「クラン」を見て、迷信深い黒人たちは、南部同盟の戦死者の亡霊に違いないと信じて恐れた。
母親と道路を横断中、フォレストは金属の柵に脚装具がひっかかり、動けなくなりました。
周りの人は珍しげにフォレストに注目します。
フォレストの母:
「何見てるの?」
「脚装具をはめた子は初めて?」
母は威嚇するように見物人に注意します。
改めてフォレストに向かって戒めます。
フォレストの母:
「他人に馬鹿にされてはダメよ」
「神様が公平なら、皆、脚装具をはめるべきなのよ」
お母さんは宿屋を経営していたので、たくさんの人を見てきて、人間観察に長けていたのですね。
そして、彼女は「愛の人」です。
フォレストの幸運の泉は母の愛ゆえのものです。
03.無償の愛
物語が進んでいくうちに、皆様方はフォレストの母の役割の大切さが分かってくると思います。
この世のお母さんの『無条件の愛』『無償の愛』を体現した母親です。
フォレストは身体が不自由でも、知能も低くても、息子の存在そのものを受け入れるような愛をそそげる人です。
それとは逆に世の中には多くの『条件付きの愛』を与える親がいます。
周りの子と比較して、出来ないことを責める。
本人の意志は尊重せずに、社会規範を厳しく当てはめる。
「これが出来なければ、あなたを好きになりません」と言っているような親です。
子供は親に愛してもらうために、親の理想に近づこうと努力しますが、追いつくことができません。
やがて、理想とは違う自分を嫌い、自己否定する大人になっていきます。
周りの人をすべて競争相手と見て、敵とみなしてしまいます。
劣等感のため、いつまでも実らぬ努力をし続け、人は離れていき、孤独になります。
『無条件の愛』は子供に安心感を与え、自信を持たせ、自己を肯定させ、ゆるぎない意志を持たせて、自己実現へと誘う、幸せの連鎖を与えてくれます。
この幼少期の『無条件の愛』は何十億の大金よりその後の人の人生を幸せにしてくれます。
04.境界知能
フォレストのナレーション:
「ママは何でも僕が分かるように説明した」
「僕の家は17号線から400メートル」
「アラバマ州グリーンボウの町から歩いて800メートル」
「家にはママの家族がおじいさんのおじいさんのおじいさんの時代から住んでる」
「使わない部屋が多いので、ママは人に貸してる」
「大抵はこの辺をたまたま通りがかる旅の人たちだ」
「それがうちの収入」
「ママは頭がよかった」
フォレストの母:
「フォレスト、お前は皆と同じなのよ」
「忘れてはダメよ」
「お前は皆と同じ、何も違ってない」
小学校の校長:
「息子さんは違ってます、奥さん」
「知能指数が75しかない」
フォレストの母:「人は皆、それぞれ違ってますわ」
フォレストのナレーション:
「ママは最高の教育を望み、グリーンボウ郡立小学校の校長に会いに行った」
小学校の校長:
「これを見て下さい」
「ここが普通の子供」
「息子さんの知能はここです」
「公立小学校に入るには、最低80の知能指数が必要です」
「養護学校に入れる方が息子さんのためですよ」
フォレストの母:
「『普通』って何を指すの?」
「確かに血のめぐりは悪いわ」
「でも息子には皆を同じチャンスを与えます」
「養護学校へはやりません」
「5点足りないだけでしょ?」
「それぐらい何とか」
小学校の校長:「うちは進歩的な学校です」
「皆に機会を与えたい」
校長先生の顔が悪い顔になっていきます。
小学校の校長:「ご主人はおいでになるので?」
フォレストの母:「主人は休暇ですの」
境界知能ですね。
《境界知能》
境界知能(きょうかいちのう)とは、知能指数(IQ)の分布において「平均的とされる領域」と「知的障害とされる領域」の境界に位置すること。平均的ではないが知的障害でもない、知能指数にしてIQ70以上85未満の状態を指す。統計上、全体の14パーセントがこの「境界知能」に該当する。グレーゾーンとも呼ばれる。境界知能に該当する者は、かつては世界保健機関(WHO)に「境界線精神遅滞」として認定されていたが、現行の基準では知的障害とは見なされない。境界知能児は、知的障害児とは異なり「自分が他者からどう見られているか」を認知できる能力を持つことによって、軽度知的障害児以上に非行や精神障害への脆弱性が高いとされる。
~Wikipediaより~
校長は母と関係を持つことでフォレストの入学を許可しました。
夜にフォレストが家の外で待っている間、校長と母が『行為』をするシーンです。
校長の喘ぎ声に品がないんですね。
アメリカ映画ではこういった『不届き者』によく罰を加えますね。
小学校の校長:「イー、イー、イー、イー」
『行為』あと、汗だくの校長が家から出てきます。
フォレストに向かって言いました。
小学校の校長:
「君のママは教育熱心だ」
「何もしゃべれんのか?」
フォレスト:「イー、イー、イー、イー、イー、イー、イー、イー」
校長は慌てて退散しました。
すごくシニカルで小気味いいシーンです。
ロバート・ゼメキス監督らしく、弱者にも変な同情はしないで、ユーモアたっぷりに表現します。
そこには弱いものへの愛情があるからこそできる、滑稽な表現なのだと思います。
許せる悪意だと思います。
今からそういうシーンが度々出てきますが、決して馬鹿にしているのではないということを信じていただきたいと思います。
人々を平等に見ているんですね。
黒人に対してもそうです。
たくさんの黒人がフォレストの人生に関わってきます。
私は滑稽さとは、必死に生きているから、時に人は一点に集中しすぎているから、そして弱さがにじみ出ているから、見えてくるものだと思っています。
人って愛らしくて、愛おしい存在ですよね。
フォレストの母はフォレストに本を読んであげています。
フォレスト:「『キュウカ』って何のこと?」
フォレストの母:「『キュウカ』?」
フォレスト:「パパの行っている所」
フォレストの母:「『キュウカ』はどこかへ行って、戻ってこない事よ」
フォレストのナレーション:「家族は僕とママの2人きり」
「寂しくはなかった。家はいつも客が出たり入ったり、時には部屋が旅人で満杯になる事もあった」
05.エルヴィス・プレスリー
宿屋の風景シーンです。
フォレストの母:「皆さん、お食事よ!」
フォレストのナレーション:
「トランク1つの人、帽子箱に商品見本ケース...」
「1度泊まった若い男は何とギター・ケースを持っていた」
このフォレストの少し誤解、固執、思い入れや疑問のあるナレーションが面白いんです。
こういう所でも観客を楽しませてくれるエンタメ精神に感動しますね。
フォレストの母は部屋から聞こえてくるギターの音に恐る恐るドアを開けます。
何と、若き頃のエルビス・プレスリーですね。
ここで『ハウンド・ドッグ』〜エルヴィス・プレスリー〜の曲が流れます。
フォレストの脚装具の動きから、エルヴィスのあの腰振りのセクシーな歌い方が生まれたのだという面白いシーンです。
フォレストの母:「フォレスト、おじゃまをしてはダメよ」
エルヴィス・プレスリー:「いいんですよ、曲を披露してたんです」
フォレストの母:「お夕食の用意ができたわ」
「どうも、すぐ行きます」
「今の変わったステップをもう1度、ゆっくりな」
フォレストのナレーション:
「いいギターの音だ。僕は気に入った」
「僕は音楽に合わせて体を動かし、腰を振った」
「ある日、買い物に出て電器店の前を通りがかってびっくりした」
エルヴィスがテレビに映っていて、その曲を披露していました。
フォレストの母:「子供は見ないの」
フォレストのナレーション:
「その若者はやがて『キング』と呼ばれ、歌を歌いすぎて心臓マヒを起こしたとか」
「キングは大変なんだね」
このフォレストのナレーションはバス停に来た人に対しての会話という設定なんですね。
ナースはフォレストの話に少しずつ興味を持ちはじめ、雑誌を読むのを止めます。
06.最愛の人、ジェニー
フォレストのナレーション:「思い出せる事と思い出せない事がある」
やがて、フォレストは小学生になり、初めてのバス通学。
フォレストの母:「しっかり頑張って」
フォレスト:「分かったよ、ママ」
フォレストのナレーション:
「初めて学校へ行った日の事はよく覚えている」
バスの運転手:「乗るの?」
フォレスト:
「知らない人の車に乗るなって」
バスの運転手:「これはスクールバスよ」
フォレスト:「僕はフォレスト・ガンプ」
バスの運転手:「私はドロシー・ハリス」
フォレスト:「もう知り合いだね?」
バスの運転手は笑顔でフォレストを迎え入れます。
運転手は女性ですが、くわえタバコでいかにもファンキーな人なんですね。
フォレストは席に着こうとしますが、誰も空けてくれません。
男の子A:「ここはダメ」
男の子B:「ダメだよ」
女の子は首を振ります。
男の子C:「よそへ行け」
フォレストのナレーション:
「記憶って不思議だな。生まれた時の事は覚えていない」
「最初のクリスマスも、最初のピクニックも覚えていない」
「でも、この世で一番優しい声を聞いた時は覚えている」
フォレストは席を譲ってもらえず、バスの中でしばらく立っていました。
ジェニー:「ここに座っていいわよ」
フォレストのナレーション:
「彼女みたいに美しい子を見たのは初めて」
「天使のようだった」
ジェニー:「座りたくないの?」
フォレストはジェニーの隣に座ります。
ジェニー:「脚をどうしたの?」
フォレスト:「何でもない。ありがとう。心配しないで」
フォレストのナレーション:
「僕は彼女の隣に座ってずっと話し続けた」
フォレスト:「背骨が『?(クエスチョンマーク)』の形なんだ」
脊柱側弯症ですね。
《脊柱側弯症》
背骨(脊柱)は頭から骨盤までを、理想的には、正面から見るとまっすぐに、横から見ると頚椎(首)は前に向かって、胸椎(肋骨がついている胸の骨)は後ろに、そして腰椎は前に向かって弯曲し、緩やかなS字型を形成してバランスよく身体を支えています。この形が崩れることを脊柱変形と呼び、左右(側方)に曲がってしまうものを脊柱側弯症といいます。先天性(生まれつき)の背骨の奇形、神経・筋原性(神経や筋肉に原因がある)や結合織異常(身体を支える組織の異常)、外傷、腫瘍など、原因となるものが明らかな側弯症のほか、特に原因のないものがあります。これを特発性側弯症といい、脊柱側弯症の80%以上を占めます。特発性側弯症は、10歳未満で発症・診断された早期発症側弯症と、10歳以降で発症する思春期側弯症とに分類されます。思春期に発症するものが最も多く、また男子に比べ圧倒的に女子に多い(5〜8倍)ことが知られています。通常は成長(身長の伸び)とともにねじれを伴った側弯変形が進行し、成長の終了とともに進行も止まります。変形は残りますが軽度の変形であれば、腰痛など痛みの原因になることはなく、妊娠や出産などその後の生活にも影響しません。しかし、「ある程度以上」に変形したものはその後も少しずつ進行し、やがて内臓を圧迫するようになり、健康に害を及ぼすこととなります。変形が大きくなると肺の圧迫から呼吸障害をきたし、さらには心不全を起こす可能性があります。そのため、「ある程度」の変形を超えないよう、早期発見と診断、早期の治療介入が重要となります。
フォレスト:「ママ以外の人が僕と話をしてくれるなんて」
ジェニー:「あなた、バカなの?」
フォレスト:「ママは『バカをする者がバカ』だって」
ジェニー:「私はジェニー」
フォレスト::「僕はフォレスト・ガンプ」
フォレストのナレーション:「その日から僕らは豆と人参のようにいつも一緒」
フォレストは母の愛情や励ましをたくさん貰って育ちます。
全然、ひねくれていないんですね。
母の言葉を真っ直ぐ信じています。
誰でも自分の劣っている所に段々と気づいてきますよね。
でも、愛情を注がれた子供は立ち直ることができるんです。
フォレストのナレーション:
「木登りを教わり、ぶら下がる事を教えた」
「読み方を教わり、ブランコを教えた」
「時々はただ座って、星が出るのを待った」
フォレスト:「ママが心配してる」
ジェニー:「もう少し、ここに」
フォレストのナレーション:「ジェニーはなぜか家を嫌った」
フォレスト:「じゃあ、もう少しいるよ」
フォレストのナレーション:
「彼女は僕の特別な友達」
「たった1人の友達」
ジェニーはこの作品の大事な主人公の一人です。
ジェニーは母親が早くに死に、実の父親に性的虐待を受けて育ちます。
愛情を求めても返ってこない親。
いつも罵倒され、自分に責任を感じながら生きてきました。
そうして、自分さえも嫌って生きていくようになります。
満たされない自分。自信を持てない自分。自己否定、無価値感、虚無感。
ありとあらゆるマイナスの感情を携えたまま成長してしまいます。
そういう人間は常に愛情飢餓に陥り、あらゆるものに愛情を求め、まるで現実をさまよい歩くように生きることを余儀なくされます。
フォレストとは対照的な人間像です。
フォレストのナレーション:
「ママは『奇跡は毎日起きる』って」
「嘘じゃない、本当だよ」
07.覚醒
再び子供時代です。
フォレストは同級生たちに石をぶつけられて逃げ出します。
同級生A:「ウスノロ!」
同級生B:「頭のトロい奴だ」
同級生C:「フォレスト・ガンプだ」
ジェニー:
「ほっとくのよ」
「走って逃げて、フォレスト!」
同級生A:「捕まえるぞ!」
ジェニー:
「フォレスト、走って!」
「フォレスト、走って!」
ジェニーの声にエコーの特殊効果がかかります。
エンターテイメントの始まりです。
フォレストは同級生に自転車で追いかけられます。
フォレストの脚装具はトランスフォーマーのように剥がれ落ちて、フォレストは凄まじいスピードを出して走ることができました。
アニメのように砂煙をだして、フォレストはどこまでも走って行きました。
草原を越え、橋を越えてどんどん走ります。
途中で30人ほどの男が鎌で草を刈っているんですね。
よくわからないシーンですが、のどかな田舎で鎌のスイングとフォレストの地面を蹴り出すピッチのリズムがぴったり合っていて、ニンマリしてしまいます。
脚装具の壊れ方がなにげに面白いです。
町中を駆け抜けるフォレストに少しボケたおじいさんが言います。
おじいさん:「あの子はいつも走ってるな」
このシーンが初めてフォレストが走っているのか、それとも好きすぎていつも走っているのか分からなくなってしまいます。
このまったりしたとぼけた雰囲気がのどかでいいんですね。
とても楽しい演出です。
フォレストのナレーション:
「信じないだろうけど、風のように速く走れた」
「その日からどこへ行く時も、僕は走った」
小学校低学年くらいまでは皆走るのが好きでしたよね。
いつしか球技など、頭を使う競技をし始めますが、改めて見て走ることは楽しいですよね。
運動会など、スポーツテストなどで走ることは競争になってしまい残念ですね。
「走ること」このようなことが、今までフォレストにはできなかった。
今までの我慢を晴らすかのように、フォレストはたくさん走ります。
心臓の高鳴り、浮遊感、景色がどんどん変わっていく。物語がすぅ〜と自分に入ってくる感覚ですね。
08.ジェニーの家庭環境
フォレストのナレーション:
「『ジェニーは家を嫌ってる』と言ったろ?」
「彼女の家は古く、5歳の時、彼女のママは天国へ」
「パパは農業をしてた」
「優しいパパでいつも娘たちをなで回しキスしてた」
「ある日、ジェニーはスクールバスに乗らなかった」
フォレスト:
「ジェニー?」
「学校を休んだの?」
ジェニー:「しぃー、パパがお昼寝を」
ジェニーの父親:
「ジェニー!」
「ジェニー!どこへ行く!」
「早く戻ってこい!」
ジェニーの父親が酒瓶片手に、トウモロコシ畑の中を追いかけてきます。
ジェニー:
「フォレスト、一緒に祈って」
「神様、ここから逃げられるよう鳥にして下さい...」
「神様、ここから逃げられるよう鳥にして下さい...」
「神様、ここから逃げられるよう鳥にして下さい...」
フォレストのナレーション:
「ママは言った。『神様の働きは不思議だ』と」
「神様はジェニーを鳥にはしなかったけど、警察を呼んでジェニーを家から連れ出し、町のおばあさんに引き取らせた」
「僕の家の近所だった!」
「夜になるとジェニーは時々家を抜け出して来た」
「『怖いから』と言ったが何が怖かったのか」
「きっと、おばあさんちの犬が怖かったんだろう」
いつも父親の残像から、そして自己否定するジェニー自身から追い立てられて心の休まる日はなかったジェニー。
ジェニーは無意識にも、フォレストのそばがとても落ち着く『安全場所』だと思ったのでしょう。
『無償の愛』の中で育てられたフォレストにはそういった安らぎを持っているのだと思います。
フォレストのナレーション:「とにかく僕とジェニーは高校でも親友だった」
09.一期『多』会のはじまり
次にハイスクール時代に変わります。
小学生の時と同じくフォレストは同級生たちに石をぶつけられて逃げ出します。
同級生A:「おい、ボケ!」
同級生B:「ボケ、聞こえてんのか?」
ジェニー:
「早く逃げて!」
「フォレスト、走って!」
今度は乗り物がグレードアップしていて、フォレストは同級生に自動車で追いかけられます。
ジェニー:
「フォレスト、走って!」
「フォレスト、走って!」
再びエンターテイメントの始まりです。
俊足のフォレストでも自動車には勝てません。
フォレストでは急角度で横に走り抜けました。
フォレストのナレーション:「どこへ行く時も走ったけど、あんな事になるとは...」
そのまま大学のアメフト練習場に駆け込んで、快速を飛ばします。
アメフトのヘッドコーチ:「あいつは誰だ?」
準コーチ:「フォレスト・ガンプです。トロい奴で。」
フォレストのナレーション:「信じられるかい?僕は大学に入った」
フォレストはアメフトチームに入り、在籍中、俊足だけで活躍します。
チームメイト:「走れ!」
ヘッドコーチ:「もっと走れ!ボケヤロー!」
相手チームはフォレストのスピードについていけず、味方同士でぶつかったり、途中でコケたりする楽しいシーンです。
競技場出口の応援幕には『GO ALABAMA GO』と書かれていたので、
ゴール地点を越えて、競技場外まで走り抜けました。
ヘッドコーチ:「頭はヨワいが脚だけはめっぽう速いや」
人生は何が起こるか分かりませんね。
本当にチョコレートの箱のようで、食べてみないと分からない。
時と場所と運とそれに応じた能力が大切なのだと思います。
しかし、この作品はある長けた能力が幸運を掴むことを言いたいのではありません。
やはり、人の『こころ』なんです。
10.アラバマ大学の黒人入学
フォレストのナレーション:
「僕だけかもしれないが、大学はヘンな所だった」
TVのナレーター:
「本日、機動隊がアラバマ大学の構内へ。2人の黒人学生の入学にフォレス知事は抗議を表明しました。入り口をふさぐウォレス知事に対し、ケネディ大統領は機動隊に実力行使を指令。画面は州軍のグラハム指揮官とウォレス知事です。」
《ジョージ・ウォレス:アメリカの政治家》
2度目の州知事選挙では一転して過激な主張を繰り返し、人種隔離政策や労働者の権利拡大を強く訴え、圧倒的得票で1962年にアラバマ州知事に就任する。このときウォレスが掲げたスローガンは「今ここで人種隔離を!明日も人種隔離を!永遠に人種隔離を!」(I say segregation now, segregation tomorrow, segregation forever.)という人種差別主義的なものであった。
《アラバマ大学への黒人学生入学阻止事件》
1963年には2人の黒人学生であるジェームズ・フッドとヴィヴィアン・マローンのアラバマ大学の入学を阻止するために、自ら大学の門の前に立ちはだかった。これに対してジョン・F・ケネディ大統領は黒人学生を保護するために州兵を派遣するとともに、司法副長官のニコラス・カッツェンバックを特使として派遣し、2人の入学を認めるよう求める大統領布告を読み上げて認めさせた。尚この事件の際、交渉に当たったロバート・ケネディから「それでもあなたはアメリカの市民か!」と一喝された
~Wikipediaより~
大学構内に人だかりができていました。
フォレスト:「何があったんだい?」
学生:「黒タヌキが入学する」
フォレスト:「ママはほうきで追い払うよ」
フォレストは比喩を理解できていませんでした。
学生:「『黒人』の事だよ。この大学へ入ってくる」
フォレスト:「彼らが?ここへ?」
ウォレス/アラバマ州知事:
「ここにいる州軍は、アラバマ州民のために闘う味方です。アラバマに住む我々の兄弟です。勝利は我々のものです。なぜなら我々の警告が今日、全米の人々の前で実証されるからです。この国は軍事独裁国への道を歩んでいるのです。」
TVナレーター:
「本日をもってアラバマ大学は人種差別を廃止して2人の黒人学生は晴れて入学を許されました。ウォレス知事は暴徒の動きを制止...」
実際の演説映像の中にフォレストが映り込んでキョロキョロとしています。
何と皮肉がこもったシーンでしょう。
この演説でフォレストはウォレス知事の挨拶時に手をあげる仕草を見つめて、のちにものまねを始めます。
堂々と入学する二人の黒人学生。
その一人が本を落としますが、フォレストはただ一人彼女のために拾ってあげます。
実際の入学映像に特殊撮影でフォレストを写し込ませています。
当時の周りの黒人差別がどのようなものだったかを如実に物語っていますね。
フォレストのナレーション:
「数年後、あの時怒ってた小男は大統領に立候補した」
「それに怒った奴が発泡」
「彼は死ななかった」
バスを待つ黒人のナースはフォレストに親近感を持ったのか、去る時に声をかけました。
黒人ナース:「私のバスが来たわ」
フォレスト:「9番ですか?」
黒人ナース:「いいえ、4番よ」
フォレスト:「失礼しました」
11.女子寮の夢
隣にいた赤ん坊を抱えた白人女性が近寄ってきてフォレストに話しかけます。
白人婦人:
「私も覚えているわ」
「知事が撃たれた時、大学生だったの」
フォレスト:「女子大?男女共学の大学?」
白人婦人:「共学よ」
フォレスト:
「ジェニーは女子大で僕は入れてもらえなかった」
「でもよく会いに行った」
ジェニーはボーイフレンドに送ってもらって、車内でいちゃついていました。
それを見たフォレストはジェニーが襲われていると思い、ボーイフレンドに殴りかかります。
ジェニー:
「フォレスト!やめて!」
「フォレスト!やめて!何するのよ!」
ボーイフレンド:「こいつは何だ!」
ジェニー:
「ビリー、やめて!」
「話を聞いて」
「フォレスト、ひどいわ!」
フォレスト:
「チョコレートだよ」
「ごめんよ」
「僕は寮へ帰る」
ジェニー:
「フォレスト、ズブ濡れよ」
「いらっしゃい」
ジェニーのようないつも愛情を求めている『愛情飢餓感』がある人は、他人に依存しないと不安でたまらないんですね。
そして、それを利用する人がたくさんいることも事実です。
このボーイフレンドはそういう人であり、そのことにジェニーも薄っすらと気づいているのだろうと思います。
簡単にフォレストを許して、女子寮の部屋に案内しました。
次の会話でとても大事な言葉が話されています。
ジェニー:
「夢を持ってる?」
「将来何に?」
フォレスト:「『将来何に?』僕は僕だよ」
ジェニー:
「あなたはあなただけど、違うあなたになるのよ」
「私は有名になるわ」
「ジョーン・バエズのようなシンガー」
「誰もいないステージにはギターと私の声だけ」
「私1人」
「観客の1人1人に歌いかける」
「1対1で語りかけるの」
フォレストの言葉の方が逆説的です。
幸せになるための、自己実現のための近道のように感じますね。
あるがままの自分でいることが幸せを引き寄せてくる。
ジェニーは今の自分を否定しています。
努力して、今の自分を変えて生まれ変わりたい。
そして、人々の愛をすべて受け取りたいと願っています。
劣等感をもつ人は一人残らず、生まれ変わろうと必死にもがき、実らぬ努力をします。
どうして実らないかと言うと、何かを達成したとしても『渇き』は決して潤わないからです。
それほど、『愛情飢餓感』は底しれぬものであり、『無価値感』『自己否定』は治まることは決してありません。
人にはそれぞれの能力があります。
自分の適性に合っていない能力を目指しても、決してたどり着けません。
そのあとに来るのは、人への『嫉妬や恨み』と『自己憐憫』、そして『虚無感』です。
無理に決まってますよね。人はスーパーマンにはなれません。
ジェニー:
「女の子と一緒だった事は?」
「家庭科の時間は隣に座っていたよ」
ジェニーは下着を外し、フォレストに体を触らせました。
フォレストは呼吸を忘れ、苦しくなります。
フォレスト:「ごめん」
ジェニー:「いいのよ」
フォレスト:「目が回る」
ジェニー:「家庭科とは違う?」
フォレスト:「違うよ」
ジェニーは下着をつけて、子供の頃のようにフォレストの体のぬくもりを感じました。
傷ついたジェニーが癒やされているのが分かるシーンです。
12.ケネディ大統領
相変わらずのアメフトでの大活躍。
応援団の人文字が前回は『GO ALABAMA』から『GO FORREST』に変わっていて面白いです。
加えて『STOP FORREST』の横断幕。
相手選手たちはフォレストの速さにキリキリ舞いです。
フォレストのナレーション:
「大学ではフットボールの試合ばかり」
「『全米代表チーム』とかへ入れられ、合衆国の大統領に会う事ができた。」
『代表チームに入れられ』というのがフォレストだから嫌味がないのがいいですね。
TVのナレーター:
フォレストのナレーション:
「大統領に招かれて一番うれしかったのは食べ物」
「部屋中に食べ物と飲み物が並べてあった」
「腹は減ってなかったけど、のどが渇いて、それに無料だったので、ドクター・ペッパーを15本あけた」
飲みすぎてしまって、トイレに行きたくなり、もぞもぞしている映像が本物のケネディ大統領といっしょに映っています。
ケネディ大統領:「おめでとう、気分は?」
フォレスト:「小便したい」
ケネディ大統領:「『小便したい』だそうだ」
ホワイトハウスのトイレにはマリリン・モンローとケネディ兄弟の写真がありました。
ケネディ大統領にゆかりの深い悲劇の人物たちですね。
フォレストのナレーション:
「車に乗っている若い大統領を誰かが銃で撃った」
「数年後には、彼の弟がホテルのキッチンで撃たれた」
「兄弟って大変なんだな」
「5年間フットボールをして僕は大学を卒業した」
「ママは鼻を高くした」
13.入隊
卒業式にもらった陸軍案内に応募します。
これも面白い所ですが、ロバート・ゼメキス監督は小学校のバスと同じシチュエーションで陸軍に入隊します。
フォレスト:「僕はフォレスト・ガンプ」
バスの運転手:
「名前なんかクソ食らえだ!」
「ザーメンなめてるウジ虫め!」
「とっとと座れ、タマなし野郎!」
軍曹の口が悪いのは『愛と青春の旅立ち』のように昔からずっとですね。
フォレストはスクールバスと同じようにほぼ満員のバスで席を探します。
男A:「よそへ行け」
男B:「行け」
フォレストのナレーション:
「これは間違いだったのか、入隊最初の日にもう怒鳴られた」
「どうなるのか見当もつかなかった」
バッバ:
「座りなよ」
「エビ捕り船に乗った事は?」
フォレスト:「ないよ、大きな船は乗ったけど」
バッバ:
「エビを捕る船だよ。おれはずっと乗ってた」
「最初は9つの時。おじさんの船でエビを捕った」
「やっと自分の船を買えそうだ」
「おれはベンジャミン・ブルー」
「皆は『バッバ』と」
「ひどいだろ?黒人は皆『バッバ』だ」
フォレスト:
フォレストのナレーション:
「バッバの家は入江地帯で、ママの得意はエビ料理」
「ママのママもエビ料理」
「そのまたママもエビ料理」
「エビのことなら何でも知ってる一家だった」
白人に給仕する姿を何世代も見せることで、黒人の奴隷の歴史が分かりますね。
ブラックジョークですね。
バッバ:
「エビの事なら何でも知ってる」
「兵役を終えたらおれもエビで暮らしを立てる」
「いいね」
一般兵が整列している所に、怖い軍曹が顔を近づけて罵倒する、軍隊ではお馴染みのシーンです。
軍曹:
「ガーンプ!」
「貴様はなぜ軍隊に入った?」
フォレスト:「軍曹殿に従うためです!」
軍曹:
「クソったれめ!」
「貴様は天才だ」
「すばらしい答えだ」
「お前の知能指数は160か?」
「実に頼もしい新兵だ」
フォレストのナレーション:
「不思議な事に僕は釘のように軍隊にピッタリはまった」
「ベッドをきちんと作って直立不動」
「『はい、軍曹殿!』と答えればいいのだ」
ライフルの組み立ての訓練です。
バッバはエビのことばかり話します。
バッバ:
「仕掛けた網を引き上げる」
「運のいい日は50キロ捕れる」
「2人で1日10時間働くとガソリン代を差し引いても...」
フォレスト:「出来ました!」
軍曹:「早いな、どうやった?」
フォレスト:「お教え通りに」
軍曹:
「たまげたな、こいつは新記録だ」
「ただの兵隊では惜しい」
「士官学校から末は将軍になる人材だ」
「次は銃を解体しろ!」
バッバ:
「前にも言ったが、エビは海の果物だ」
「焼いても、茹でても、煮ても、炒めてもいい」
「エビ・カレー、エビのうま煮、エビ・ガンボ、エビフライ、カラ揚げ、衣揚げ、パイナップル味、レモン味、ココナッツ味、ペッパー味、エビ・スープ、エビ・シチュー、エビ・サラダ、エビ・ポテト、エビ・バーガー、エビ・サンド...」
「それだけかな?」
フォレストのナレーション:
「兵舎の夜は寂しかった」
「ベッドに横になってママを想った」
「そしてジェニーの事も」
すると隣の男からポルノ雑誌を渡されます。
見てみると、ジェニーが掲載されていました。
14.風に吹かれて
フォレストのナレーション:
「大学のセーター姿で写真を撮らせたジェニーは大学を追い出された」
「彼女はツイてた」
「メンフィスで劇場を持ってる男が、彼女の写真を見て舞台で歌う仕事をくれた」
「僕は休みの日、バスに乗って彼女のショーを見に行った」
司会:
「次はハリウッドから招いた目にも楽しい歌姫。ビートニック・ビューティーの登場です」
「ミス・ボブ・ディロン」
彼女はアコースティックギターで上半身を隠し、歌を歌うストリッパーになっていました。
『風に吹かれて』〜ボブ・ディラン/ジョーン・バエズ〜の曲を弾いていました。
~『『風に吹かれて』(Blowin’ In The Wind) ボブ・ディラン~
♫ How many roads must a man walk down
どれだけ多くの道を歩めば
♫ Before you call him a man?人は人として認められるの?
♫ How many seas must a white dove sailどれだけ多くの海の上を飛べば
♫ Before she sleeps in the sand?白い鳩は砂浜の上で休めるの?
♫ And how many times must the cannon balls flyどれだけ多くの鉄砲玉が飛んだら
♫ Before they’re forever banned?それらが禁止されるの?
♫ The answer, my friend, is blowin’ in the wind友よ、答えは風の中に舞っている
♫ The answer is blowin’ in the wind.答えは風の中に舞っている
フォレストのナレーション:
「彼女の夢は叶った」
「フォーク・シンガーだ」
この皮肉はとても悲しいものがあります。
『どれだけ多くの道を歩めば、人は人として認められるの?』はジェニーの今の心情を表していて、切なくなりますね。
歌詞とジェニーの現状をシンクロさせているところが、観るものの心に響きます。
観客:
「ハーモニカに替えな」
「オッパイを見せろよ」
ジェニーは脚を触ってきた客と喧嘩になります。
ジェニー:
「やめて、歌ってるのよ!」
「やめて!」
フォレストはステージに上がり、客をジェニーから引き離しました。
ジェニー:
「フォレスト、あなたなの?」
「ここで何を?」
フォレストは裸のジェニーを抱えあげ連れ出そうとします。
ジェニー:「フォレスト、やめて!」
二人は舞台から出ました。
ジェニー:「私を助けようとするのはやめて」
フォレスト:「あいつら乱暴を」
ジェニー:
「あれくらい慣れっこよ」
「いいこと?いい加減にやめて」
フォレスト:「でも君を愛してるんだ」
ジェニー:
「愛が何か分かっていないのに...」
「昔、祈った事覚えてる?」
「『遠くへ逃げたいから鳥になりたい』と」
フォレスト:「もちろん、覚えてるよ」
ジェニー:「この橋から飛べる?」
フォレスト:「どういう意味だい?」
ジェニー:「いいの」
ジェニーは自死まで追い詰められていました。
どうしようもない『無力感』がジェニーを捕らえて離さないでいます。
ジェニー:「もう行くわ」
ジェニーは知り合いの車を見つけ、乗り込もうとしました。
フォレスト:「待てよ」
ジェニー:
「私の事はもうほっといて」
「乗せて」
「どこへでも」
フォレスト:
「さよなら、ジェニー」
「僕はベトナムに送られる」
「遠い外国だよ」
それを聞いたジェニーは車に乗り込むのを止めました。
ジェニー:
「待ってて」
「それなら約束して」
「何かあったら勇気など見せずに走って」
フォレスト:
「分かった」
「ジェニー」
「毎日、手紙を書くよ」
ジェニーは何も言わず車に乗り込み去っていきました。
フォレストに度々干渉されながらも、心優しいジェニーはフォレストを許してきました。
それも段々と心の余裕が無くなってきているところが切なくなりますね。
一方のフォレストは、辛抱強くジェニーを見守り続けています。
フォレストから『無償の愛』を感じずにはいられません。
ジェニーにとって、フォレストは心の巣のはずです。
ジェニーは劣等感のため、そして自身の理想像を追い続けているので、今はまだ素直に受け入れることができないんですね。
フォレストのナレーション:「そのまま彼女は行ってしまった」
15.戦場へ
《ベトナム戦争》
ベトナム戦争は、当時南北に分断されていたベトナムで社会主義のベトナム民主共和国(北ベトナム)と資本主義のベトナム共和国(南ベトナム)の間で勃発した戦争であり、冷戦中に起こった資本主義と社会主義の代理戦争であるとされる。経済力・物量の差から「象と蟻」の戦いと揶揄された。
ベトナムの南北両国では以前から対立が続いており、南ベトナム国内では北ベトナムに支援された反政府組織である南ベトナム解放民族戦線(解放戦線)が活動して南ベトナムの警察や軍などと争いが起こっていた。南ベトナムの同盟国であるアメリカ合衆国(アメリカ)は以前から軍事顧問を送り込むなどして南ベトナムを援助していたが、1964年8月のトンキン湾事件を契機として全面的な軍事介入を開始した。南北ベトナムと解放戦線、そしてアメリカは一気に全面戦争に突入したが、アメリカ軍は北ベトナム軍や解放戦線側によるゲリラ戦を相手に苦戦し、最終的に和平協定を結んで撤退した。戦争はその後、1975年4月30日に北ベトナム軍が南ベトナムの首都サイゴン(現在のホーチミン市)を陥落させるまで続いた。
~Wikipediaより~
フォレストは出征前に母のもとに帰ります。
母は黙って優しくフォレストを抱きしめました。
綺麗なまだ暖かな夕陽がフォレストを包み込んでいました。
それは母性そのもののようでした。
フォレストの母:「無事に戻って来るのよ」
『フォーチュネイト・サン』〜クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル〜の曲と共に軍用ヘリの音でベトナム時代が始まりました。
フォレストのナレーション:
「缶ビールとバーベキュー以外は確かに違ってた」
バッバ:
「この海にはエビがいるぞ」
「エビの捕れる国だ」
「戦争に勝ってここを占領したら、エビの漁師をここに呼ぼう」
「腰を抜かすほどエビが捕れる」
ベトナムに赴任してきたフォレストとバッバは小隊長に挨拶に行きます。
ダン小隊長:「お前らが新兵か?」
士官だと分かり二人は慌てて敬礼します。
ダン小隊長:
「手を下げろ!」
「ここでは敬礼するな」
「士官だと分かると狙撃される」
「小隊長のダン・テイラー中尉だ」
「その下唇は?」
バッバの下唇が突き出ている顔を見て言いました。
バッバ:「生まれつきです」
ダン小隊長:
「引っ込めとけ。地雷線に触るぞ」
「出身は?」
フォレスト&バッバ:「アラバマ州です!」
ダン小隊長:「双子か?」
フォレスト:「血はつながっていません」
ダン小隊長:
「ここは厄介な所じゃない」
「すべて俺と古参兵を見習ってりゃいい」
「生きてる兵隊と死んだ兵隊の違いは1つ」
「靴下だ」
「足をいつも清潔に保て」
「靴下は休憩のたびにはき替えろ」
「メコン川は足を腐らす」
「軍曹、おれの注文したロープは?」
軍曹:「発注してあります」
ダン小隊長:「催促しろ!」
フォレストのナレーション:
「頼りになる上官だ」
「いい上官で僕は幸運だ」
フォレストの考え方はいつも前向きなんですね。
不安、心配事があれば、一気に心はそれに囚われて、恐怖心で一杯になります。
フォレストのナレーション:
「軍人の家系に違いない」
「先祖は国のために戦い戦死した」
前述のバッバの家系と同様に、アメリカの今までの戦争で戦死するシーンがコメディタッチで映されています。
途中で『スループ・ジョン・B』~ザ・ビーチボーイズ〜の曲が流れてきます。
ダン小隊長:
「アーカンソー出身か?」
「リトルロックを知ってるがいい町だ」
あまり話を聞かない上官ですね。それでもフォレストは頼りになると言っているところが面白いですね。
ダン小隊長:
「荷物を解いて足りない物は軍曹に請求しろ」
「腹が減ったらステーキがある」
「隊律を忘れるなよ。足を清潔に保て」
「バカはするな。特に敵に撃たれるような事はな」
フォレスト:「命令に従うぞ」
フォレストのナレーション:
「あちこちを歩いてこの国の方々を見た」
「捜す相手は『ゲリラ』ってヤツだ」
「面倒な事もあった」
「小隊長は道を歩いててヘンだとヒラめくと、こう怒鳴った『伏せて声を出すな!』」
「僕らは従った」
「僕だけの意見だけど、皆いい兵隊ばかりだった」
「フェニックス出身の『ダラス』」
「『テキサス』は彼は何州の出身かな?」
「ベトナムではいつもどこか行く所があった」
「何かやる事もあった」
「ある日雨が降り始めて4ヶ月ずっと降り続けた」
「あらゆる雨を経験した」
「身を刺すような雨」
「ボタボタ降る大粒の雨」
「横から吹きつける雨」
「時には下から吹きあげる雨もあった」
「雨は夜も降り続けた」
バッバ:
「フォレスト、互いに寄り掛かって寝よう」
「泥の中に倒れないで済む」
「お前とおれは相棒だ」
「兄弟のように互いを気づかってる」
「考えてた事がある」
「大切な事を尋ねたい」
「おれとエビ商売を始めないか?」
フォレスト:「いいよ」
バッバ:
「全部、経費を計算した」
「船を買うのは幾らか」
「ガソリン代もな。船で寝起きすりゃ、安上がりだ」
「おれが船長。だが稼ぎはきっちり分ける」
「5割ずつだ。それに好きなだけエビが食えるぞ」
フォレスト:「お前は頭がいい」
フォレストのナレーション:
「バッバは頭がよかった」
「ジェニーにもその事を書いた」
「ほとんど毎日手紙を書いた」
「僕のしてる事を書き、彼女のしてる事を尋ねた」
「『いつも君を想ってる』と」
「『君の返事を待ちわびている』という事も書いた」
皮肉にも、差し込まれるジェニーの映像はヒッピーになってあてどなく移動しているシーンでした。
《ヒッピー》
1960年代のアメリカで既存の道徳観や生活様式に反抗し,ひげや長髪をたくわえ,ジーンズや風変りな衣装を身につけ,ドラッグやサイケデリックなロック音楽,東洋的な瞑想を好み,定職につくことを拒否して放浪した人々を指す。アメリカにおいて、ヒッピーの一部はベトナム戦争と徴兵制に反対し、そのため主流社会の軍事的覇権主義に反対し、父親世代の第二次大戦や原子爆弾への無条件支持の姿勢、ベトナムでの米軍の圧倒的な軍事力による暴力やホロコーストなどに対して、音楽や麻薬、非暴力によって対抗(カウンター)しようとした。結果、自然と愛と平和とセックスと自由、巡礼の旅の愛好家として社会にうけとめられた。彼等は当時、西側の若者の間で流行した毛沢東思想や、コミューンの形成、環境運動や動物愛護、自然食、LSD、マジックマッシュルーム、マリファナ擁護に加えて、ヨガ、インド哲学、ヒンヅー教、禅、仏教などの東洋思想に関心をよせた。これまでの欧米の思想にはない概念を東洋からみちびきだすことによって、より平和で調和に満ちたユートピアを夢見た。
~Wikipediaより~
フォレストのナレーション:
「無事だと知らせたかった」
「手紙の最後はいつも同じ。『愛をこめて、フォレスト・ガンプ』」
16.戦闘
フォレストのナレーション:「ある日、いつものように歩いていると、突然何の訪れもなく、誰かが雨を止め、太陽が顔を出した」
すると、突然、部隊は敵に銃撃されました。
兵士:「敵はあの茂みだ!」
ダン小隊長:「本隊!こちら『リマ6』!」
兵士:「救急班!」
ダン小隊長:
「森の中から攻撃を受けてる」
「敵の武器はAKライフル銃とロケット砲」
「敵兵の数は30人前後」
「こちら負傷者多数。ブルーラインまで後退する」
「後退だ、後退しろ!」
バッバ:「フォレスト、走れ!」
ダン小隊長:「後退だ!」
バッバ:「フォレスト、走れ!」
ダン小隊長:「何してる!走れ!」
ダン小隊長はフォレストに後退するように体を持ち上げます。
フォレストのナレーション:
「ジェニーの言葉通り僕は走った」
「走り過ぎて独りになった。ここではマズい事だ」
フォレスト:「バッバは?」
フォレストは親友が心配になり、前線へ戻りました。
フォレストのナレーション:「バッバは親友だ。無事を確かめねば」
フォレスト:「バッバ!」
フォレストのナレーション:「バッバを捜しに戻る途中、倒れてる奴を見つけた」
フォレスト:「『テキサス』!」
フォレストのナレーション:
「ほったらかしには出来ない」
「彼をかつぎ上げて走った」
フォレストのこの行為を、人は『馬鹿だから』と解釈するかもしれませんが、私は違うと思うのです。
しっかりとした愛情で育てられた人は、他の人より日常の不安や恐れの気持ちが少ないのだと思います。
そういう人はしっかりと現実を直視できます。
そして『愛の人』はその育まれた、いいイメージを『意志』に変えて、『行動』を取ることができるのだと思います。
『行動』までしっかり導いてくれるこのイメージを心理学者ディヴィッド・シーベリーの言葉で『機能的心象』といいます。
自身が守られていると信じて疑わない人は迷いがないのだと思います。
フォレストのナレーション:
「バッバを助けに戻るたびに声がした」
「『フォレスト、助けてくれ』」
「バッバはどこにいるのだろう」
バッバを探している最中に脚が重症で動けないダン小隊長を見つけました。
ダン小隊長は無線で連絡を取り続けていました。
ダン小隊長:「敵に包囲されてる。空から掃射してくれ」
フォレストは横の兵士が死んでいるのを確認しました。
フォレスト:「こいつは死んでいます」
ダン小隊長はフォレストを跳ね飛ばし言いました。
ダン小隊長:
「彼だけじゃない、皆やられちまった」
「何する」
「何する!おれの事はほっとけ!」
フォレストは無線機とダン小隊長を切り離して、抱えあげて安全な場所まで連れて行きます。
無線機:「『リマ6』へ空から応援を送る」
フォレストのナレーション:「その時何かが尻を噛んだ」
ダン小隊長:
「隊を見捨てる事はできん。さっきの場所へ戻せ!」
「お前だけ早く逃げろ!」
「聞こえないのか?」
「早く俺を下ろせ!」
「お前は逃げろ」
ダン小隊長の先祖の戦死の想像シーンもそうですが、皆、背中から地面に倒れて後頭部を打ちます。
ここにもなにげにリフレイン効果のユーモアが発揮されていますね。
ダン小隊長:
「誰がおれを運べと言った?」
「どこへ行く?」
フォレスト:「バッバを」
ダン小隊長:
「空からのナパーム攻撃がある」
「ここにいろ!命令だ!」
フォレスト:「バッバを見つけなきゃ!」
フォレストは信念の人です。
馬鹿だから上官の命令にしたがっていたのではありません。
ちゃんと自分の意志を持っているんですね。
味方のナパーム弾が落ちようとしている所にまたフォレストはバッバを捜しに戻ります。
バッバ:「フォレスト...」
そこには瀕死のバッバが倒れていました。
バッバ:「おれは大丈夫だ。心配ない」
フォレストがバッバの腹部を見ると焼けただれていました。
フォレスト:「バッバ、大変だ」
バッバ:「大丈夫、助かるよ」
辺りからはベトナム語で喋る敵兵がうろついていました。
味方のナパーム弾攻撃が始まりました。
フォレストはバッバの巨体を抱え上げ、安全な場所に連れていきます。
フォレストのナレーション:「これが最後だと知っていたら、もっと何か考えて話したのに」
フォレスト:「やあ、バッバ」
バッバ:
「やあ、フォレスト」
「フォレスト、なぜこんな事に?」
フォレスト:「撃たれたのさ」
フォレストのナレーション:
「それからバッバは一生忘れられない事を言った」
バッバ:「うちへ帰りたい」
この一言はフォレストにとって、大切な言葉として胸に刻まれます。
人は苦難が訪れると故郷に思いを寄せるのだなと悟ります。
のちにジェニーにもアラバマに戻るように言いますね。
人にはそれぞれ安寧の地、回復の場所があるのだと思います。
フォレストのナレーション:
「バッバは僕の親友だった」
「親友はどこにでもいるわけじゃない」
「エビ捕り船の船長になるはずが、ベトナムで死んでしまった」
「言えるのはそれだけだ」
バス停のベンチには中年男性に変わって座っていました。
中年男性:「弾丸だったのか?」
フォレスト(バス停にて):「弾丸?」
中年男性:「噛み付いた物さ」
フォレスト(バス停にて):
「そうです。僕の尻に噛み付いたんです」
「皆は『100万ドルのケガだ』って」
「金は軍隊が取ったらしく、僕は見てません」
17.ダン小隊長の絶望
フォレストのナレーション:
「ケガして1つよかったのは、好きなだけアイスクリームをもらえた事だ」
「それに僕の隣のベッドには友達がいた」
「ダン小隊長、アイスクリームです」
「アイスクリームですよ」
ダンは脚を切断し、名誉の戦死もできず、生きる意味を失っていました。
フォレストが差し出したアイスクリームを取り、尿瓶の中に捨てました。
ダンの絶望感とフォレストのアイスクリームがとても対照的ですね。
ユーモアがあるシーンですね。
脚を切断して動けなくなった様子がユーモラスに表現されています。
ダン小隊長は入浴のために介護されて連れて行かれました。
フォレストに郵便が届きます。
兵士:「ガンプ、ガンプ」
フォレスト:「僕です」
ジェニーに送った手紙が宛先人不在ですべて返送されてきました。
リラクゼーションルームで傷を癒やしているフォレスト。
松葉杖の負傷兵士が卓球を教えてくれました。
松葉杖の負傷兵士:
「やるか?教えてやるよ」
「ゲームに勝つコツは1つだ。何があろうと絶対に球から目を離さない事だ」
フォレストのナレーション:「僕はなぜかピンポンと性が合った」
松葉杖の負傷兵士:「ほらな、バカでも出来る」
フォレストのナレーション:
「僕はピンポンに凝り、相手のいない時でも一人で球を打った」
尿瓶に球を次々と入れてコントロールを磨きました。
次のシーンでは負傷兵士が集まって、フォレストの球さばきを見る慰安会のようでした。
フォレストのナレーション:
「皆は僕の事を『水を得た魚のようだ』と」
「どういう事かな?」
「ダン小隊長まで見物に来た」
ダン小隊長は窓を向いて不貞腐れていました。
こういった生きる希望を失った人をこのように『雑に』ユーモラスに扱っている所にこの作品の深さが感じられます。
人の悩みが不思議とちっぽけなものに見えてきます。
お笑いもペーソスといった感情を織り交ぜると不思議な効用を見せるものですね。
フォレストのナレーション:「ピンポンにとりつかれてラケットを持って寝た」
真夜中、突然ダン小隊長がフォレストの首を掴み、思いをぶつけてきました。
ダン小隊長:
「人間には持って生まれた運命ってものがある」
「最初から決められてるんだ」
「部下と戦死すべきだったのに、俺のこのザマを見ろ!」
「両脚がないんだぞ。よく見ろ!」
「もう二度と歩けないんだぞ。貴様に分かるか?」
フォレスト:「分かります」
ダン小隊長:
「話が分かったのか?」
「貴様のせいだ!」
「俺は戦場で名誉の戦死を遂げるはずだった」
「そういう運命を貴様がぶち壊したんだ!」
「俺の話が分かるか?」
「こんな事になるはずじゃなかった」
「俺の運命じゃない」
「俺はダン・テイラー中尉だった」
フォレスト:「今だってダン中尉です」
ダン小隊長:
「俺を見ろ。どう生きればいい?」
「どう生きれば...」
ダン小隊長はこれから自分を見つめて受け入れることをしなければなりません。
今の彼の心はあの脚がなくなった戦場にいるままです。
現在にはまだありません。
フォレストの『今だってダン中尉です』と言った言葉が心の支えになってくれることでしょう。
フォレストが正直に言ったこういった言葉が、本当に真を捉えていて、演出の巧みさに驚かされてしまいます。
フォレストは先の戦場での仲間の救出で『栄誉勲章』を受けることとなりました。
それをダン小隊長に報告しにベッドにいきますが、彼は何も言わずすでに帰国していました。
フォレストのナレーション:「2週間後、僕も国へ戻った」
18.栄誉勲章と反戦運動
TVのナレーター:
「叙勲式に先立ち、大統領はベトナム戦争を更に拡大する必要性を述べ、4人の兵士に栄誉勲章を...」
『ミセス・ロビンソン』〜サイモン&ガーファンクル〜の曲が流れ、時代を感じさせます。
式には母の姿が誇らしげに映っています。
ジョンソン大統領:
「祖国から感謝のしるしを...」
「負傷をしたそうだな。どこに?」
フォレスト:「ケツです」
ジョンソン大統領:
「危なかったな」
「見たいものだ」
フォレストは全国生中継のさなか、ズボンを降ろし大統領にお尻の傷跡を見せました。
ジョンソン大統領:「何て奴だ」
フォレストのナレーション:
「ママはホテルで休むと言ったので、僕は1人で首都見物に出掛けた」
「ママがいなくてよかった」
「町は見物人でいっぱいだった」
「それも大声で叫ぶ行儀の悪い連中だ」
「何を見るのも行列だった」
皮肉にも、叙勲式を受けたあと、知らずにバスに乗せられて、フォレストは反戦集会に参加することになります。
こういった何気にトラブルに巻き込まれる所はチャップリン作品のようでもありますね。
反戦運動家:「負傷兵のバスが来たわ」
フォレストのナレーション:
「演説をしてる男がいた」
「アメリカの国旗のシャツを着てた」
「『F』のつく言葉を連発」
「何でもF...F...ばかり」
「彼がF言葉を言うたびに人々は大喜びした」
フォレストは壇上に呼ばれ、言葉を発するように求められます。
そこはワシントンD.C.リンカーン記念館のリフレクティング・プールで行われた反戦集会でした。
何万人もの大集会でした。
『F』の男:「前線の話を」
フォレスト:「ベトナムの話?」
『F』の男:「ベト『ファッキング』ナムだよ!」
『F』の男は観衆に向かって拳を突き上げます。
観衆は盛り上がり、フォレストのスピーチに注目が集まります。
フォレストのナレーション:「僕に言える事はたった1つ」
フォレスト:
「僕に言えることはたった1つです」
「ベトナムでは...」
「.........(マイクが切られ音声が遮断される)」
「僕の話はそれだけです」
突如、戦争推進派の警備の男がスピーカーの線を抜いて、スピーチを妨害します。
フォレストのスピーチは肝心なところが聴衆には聞こえませんでした。
これには撮影当時の逸話があるそうです。
以下
本作には、ベトナム戦争で大活躍したフォレスト・ガンプが、ひょんなことから、ワシントンD.C.のリンカーン記念館のリフレクティング・プールで行われた反戦集会の壇上でスピーチを行うシーンがある。フォレストが話そうとすると、集会に反対する軍関係者がわざとマイクのプラグを抜いて、フォレストがどんな演説を行ったのかを群衆は聞きとることが出来ないというシーンだ。しかしトム・ハンクスが後日明らかにした話では、フォレストはこのように演説を行っていたという。
「ベトナムに向かった人々は、時に足を失くしてママに再会することになったり、時には家に生涯帰れなくなることさえある。それは悪いことだ。ボクが言いたいのはそれだけなんだ。」
ロバート・ゼメキス監督は、脚本家のエリック・ロスが出したスピーチのアイディアがどれも気に入らず、映画に関係していない親交のある俳優達にもアドバイスをもらったが、結局、どのアイディアにも納得がいかなかったため、苦肉の策としてマイクのプラグを抜いてスピーチの内容が聞こえないようにし、映画に出てくる幻の演説シーンに落ち着いたという逸話が残っている。
~SCREEN ONLINEより~
『F』の男:
「すばらしい、その通りだ」
「君の名は?」
フォレスト:「僕はフォレスト・ガンプ」
『F』の男:「フォレスト・ガンプだ!」
19.生還の再会
ここでとても美しいシーンが始まります。
ジェニーとの再会です。
観衆の奥から、フォレストの名を叫ぶ女性が現れ、リフレクティング・プールに入水して歩いてきました。
ジェニー:「フォレスト!」
フォレスト:「ジェニー!」
フォレストは壇上から飛び降り、プールに入水してジェニーと再会を喜びました。
反戦運動のプラカード、当時のヒッピーの衣装を着た長髪でヒゲまみれの人々、そのような人々の真っ只中で、ジェニーと生還の再会をするシーンには涙なしには観れません。
何万人もの集会参加者が二人の再会を拍手して祝います。
圧巻のシーンです。
フォレストのナレーション:
「最高に幸せな一瞬だった」
「ジェニーと僕はまた豆と人参に」
「彼女は僕を案内して友達にも紹介してくれた」
それはブラックパンサー党の本部でした。
ブラックパンサー党(英: Black Panther Party、 BPP)あるいは日本語で黒豹党(くろひょうとう)は、1960年代後半から1970年代にかけてアメリカで黒人民族主義運動・黒人解放闘争を展開していた急進的な政治組織。1966年、カリフォルニア州オークランドにおいてヒューイ・P・ニュートンとボビー・シールにより、都市部の貧しい黒人が居住するゲットーを警察官から自衛するために結成された。共産主義と民族主義を標榜しており、革命による黒人解放を提唱し、アフリカ系アメリカ人に対し武装蜂起を呼びかけた。また、貧困層の児童に対する無料の食事配給や、治療費が無料の「人民病院」の建設を行った。
~Wikipediaより~
フォレストは夜景を窓から見ていました。
ブラックパンサー党員:「白いケツめ、俺たちは戦争してんだぞ」
ジェシー:「仲間なのよ」
「いいか?黒人指導者を白ブタどもから守る戦いだ」
「奴らは黒人の女を犯し、黒人社会を潰そうとしてる」
ジェシーの恋人の党員:「こいつは?」
ジェニー:
「前に話したフォレストよ」
「ウェスリーよ」
「わかったか?我々は同志全員に助けの手を差し伸べる」
「我々『ブラックパンサー』は戦争反対だ」
「黒人を憎んでる国のためになぜ黒人が戦場に行くんだ?」
「前線で戦ってやっと国へ戻れば、自分の家で寝てて殺されるんだ」
フォレストはウェスリーがジェニーを平手打ちしたのを目撃しました。
怒りが込み上がったフォレストはウェスリーを押し倒して、何度も殴りました。
ウェスリー:「君をここへ連れてきたのが間違いだった」
フォレストはジェニーに弁解をしました。
フォレスト:「あいつ、君を殴った」
フォレスト達は本部を追い出されます。
ジェニー:「行くのよ」
フォレスト:「ごめんよ、ブラックパンサーたち」
外に出て二人は歩きます。
ジェニー:「彼はカッとしただけよ」
フォレスト:
「僕は君を殴らない」
「君のボーイフレンドになりたい」
ジェニー:
「...」
「軍服を着ると素敵よ」
「とてもハンサムだわ」
ジェニーは笑顔で微笑みます。
フォレストといると安心するのでしょうね。
自分の劣等感を刺激されないというのもあるでしょう。
ですが、しばらくフォレストといると自身の劣等感を彼に投影して嫌な気持ちになるのですね。
ジェニーは自分を受け入れることがまだ出来ていませんでした。
何か大きなものにすがりつく生き方。
今は政治思想や思想家に『依存』状態なのですね。
自分が大きく見える幻想の中にいるのだと思います。
フォレスト:
「最高だな」
「僕らの国の首都で君と一緒」
ジェニー:「本当に最高ね」
フォレストのナレーション:
「ジェニーと僕は話しながら一晩中歩いた」
「彼女が方々を旅をした話」
「どうやって心を広げる方法を見つけ、調和を見出したか」
「カリフォルニアにはそういうものがあるらしい」
『花のサンフランシスコ』〜スコット・マッケンジー〜の曲が流れます。
フォレストのナレーション:
「僕らだけの素晴らしい夜だった」
「終わらないでほしかった」
フォレスト:「行かないでくれよ」
ジェニー:「行かなくては...」
ウェスリー:
「ジェニー、カッとなって悪かった」
「ジョンソン・クソ大統領のせいだ!」
「殴る気はなかった」
フォレスト:
「ジェニー、君は故郷に帰るべきなんだよ」
「アラバマにね!」
フォレストにもジェニーは明らかに病んでいるのが分かったのだと思います。
いいえ、ジェニーを愛しているからこそ、故郷に帰って心を癒やして欲しかったのだとおもいます。
ジェニー:「フォレスト、私たちの道は違うのよ」
ジェニーはまた自身の幻影を追い求めることを選んでしまいます。
自分の価値を探しながらの辛い旅を続けます。
愛情の飢餓のため、大いなるものを求め続けます。
他人に利用される人生がしばらく続きます。
フォレスト:「君にこれをあげる」
フォレストは受け取った栄誉勲章をジェニーに渡しました。
ジェニー:「もらえないわ」
フォレスト:「君の言う通りにしてもらった物なんだよ」
ジェニー:「なぜ優しいの?」
フォレスト:「恋人だもの」
ジェニー:「そう、永遠にね」
『虚無感』でいっぱいのジェニーには、フォレストの優しさが心に染みてくるんですね。
ジェニーは帰るべき場所がどこなのか徐々に気づき始めます。
『ターン・ターン・ターン』~ザ・バーズ〜 の曲が流れ、ジェニーは出発しました。
20.ジョン・レノン
フォレストのナレーション:
「そのまま彼女はまた僕の前から消えた」
「ベトナムへは戻らず、僕はピンポンで共産主義と戦う事になった」
「特別奉仕隊に入って、方々で負傷兵を慰問しながらピンポンを見せた」
「腕を買われて、全米代表卓球チームへ」
「アメリカ人の中国訪問は何百万年ぶりとかで、『世界平和を担う者』などと言われた」
「でも僕はピンポンをしただけだ」
「なのに国へ戻ったら有名人になっていた」
TVショーにジョン・レノンといっしょに出演しました。
司会:
「フォレスト・ガンプさんです」
「ジョン・レノンだよ」
「中国へ行ったなんて...どんな国だった?」
フォレスト:「中国って国は人は何も持ってません」
ジョン・レノン:「何にも?」
フォレストはジョンに対して、『何だろうこの人』というような顔をしました。
フォレスト:「中国人は教会に行きません」
ジョン・レノン:「宗教もない?」
司会:「想像(イマジン)できん」
ジョン・レノン:「努力の問題さ」
フォレストのナレーション:
「数年後、英国から来たその若者はファンのためにサインをしてて、何の理由もないのに誰かに撃たれた」
ジョンレノンの『イマジン』の歌詞そのままですね。
オマージュですね。
~『イマジン』(IMAGINE) by ジョン・レノン~
♫ Imagine there's no countries
想像してごらん 国なんて無いんだと
♫ It isn't hard to doそんなに難しくないでしょう?
♫ Nothing to kill or die for殺す理由も死ぬ理由も無く
♫ And no religion tooそして宗教も無い
♫ Imagine all the peopleさあ想像してごらん みんなが
♫ Living life in peaceただ平和に生きているって...
21.ダン小隊長の生活
フォレストが収録スタジオから出ると、何とダン小隊長が車椅子で待ち構えていました。
ダン小隊長:「議会から栄誉勲章をもらったそうだな」
フォレスト:
「ダン小隊長だ」
「ダン小隊長!」
ダン小隊長:「聞いたぞ。議会から栄誉勲章を?」
フォレスト:「もらいました」
ダン小隊長:
「あきれたな。お前なんかに?」
「テレビに顔を出して、全国民の前でトボけた事をしゃべるお前に、栄誉勲章だと」
フォレスト:「そうです」
ダン小隊長:
「あきれてものが言えんよ!」
「いや、一つだけ言おう」
「こんな国、クソ食らえだ!」
去ろうとするダン小隊長は、スロープに残った雪に車椅子がすべって倒れてしまいます。
ダン小隊長は、名誉のために生きてきた男です。
フォレストが勲章を受けたのを聞いて、悔しくて絡んできたのですね。
そのまま、フォレストはしばらくダン小隊長の世話をします。
フォレストのナレーション:
「小隊長はホテル住まいで、脚がないのでもっぱら腕を強くする運動をしていた」
想像するに、酒をあおる腕の仕草の事だと思われます
フォレスト:「このニューヨークで何を?」
ダン小隊長:「政府のお乳を吸ってんのさ」
フォレスト:「僕は小隊長とクリスマスを祝った」
TV:「皆さんに神の祝福を!」
ダン小隊長:「キリストを見つけたか?」
フォレスト:「見つかるんですか?」
ダン小隊長は苦笑して答えます。
ダン小隊長:
「手足を失った兵隊が病院で話すのはその事だけさ」
「キリストが何とか、キリストがどうとか」
「『お前は彼を見つけたか?』」
「牧師まで俺の所に現れた」
「『神は祈りを聞き給うが自分の努力も必要だ』」
「『神を受け入れれば、神と共に神の王国を歩ける』とな」
「そう言いやがった!」
「『歩ける』『神の王国を歩ける』と言いやがった」
「ケツにキスしやがれ。何が『祈りを聞き給う』だ」
「ペテンだ!」
フォレスト:「僕は天国へ行きます」
ダン小隊長:「その前にひとっ走りして酒を買ってこい」
フォレスト:「イエス、サー」
大晦日の夜でした。
二人はバーへ酒を飲みに行きます。
ダン小隊長:「入り江に何があるんだ?」
フォレスト:「エビ捕り船です」
ダン小隊長:「エビ捕り船?それがどうした?」
フォレスト:
「金を貯めて1隻買うんです」
「ベトナムでバッバと約束を」
「戦争が終わったら彼が船長で僕が一等航海士になるって」
「彼は死んだから僕が船長です」
ダン小隊長:「エビ捕り船の?」
フォレスト:「そうです。約束は約束です」
ダン小隊長は大笑いして叫びました。
ダン小隊長:
「皆、聞いたか?」
「ガンプ上等兵がエビ捕り船の船長だとさ!」
「お前が船長になる日が来たら、俺が一等航海士だ」
「お前が船長になったら、おれは宇宙飛行士になる!」
ダンの知り合いの女性:「誰なの?」
フォレスト:「僕はフォレスト・ガンプ」
ダン小隊長:「ズル賢いカーラと長いアンヨのレノーラだ」
カーラ:
「しばらく顔を見なかったわね」
「クリスマスに無料でターキーを食べられたのよ」
「珍客が来てたもんでね」
レノーラ:
「あたしたちもタイムズ・スクエアに行ったの」
「新年って大好き。またやり直せる」
「心を入れ替えてね」
何気なセリフですが、いい言葉ですね。
人は何度も失敗や過ちを犯しても、何度だってやり直せるんですね。
限界を決めるのは自分自身ですね。
フォレストのナレーション:
「この騒ぎの中で僕はジェニーの事を考えた」
「彼女は大晦日の夜をカリフォルニアで?」
彼女の生活はさらに荒んでいました。
コールガールのような服を着て、男の部屋を出ていくジェニーのシーンが挟まれます。
フォレスト:「新年おめでとう!」
ダン小隊長は車椅子なので他の人より少し背が低いんですね。
バーのカウンターから頭だけが見えています。
色とりどりの紙くずが呆然と『空虚感』に襲われたダン小隊長の頭の上に掛けられた様が私達に悲愴感を漂わせています。
ダン小隊長のホテルに戻り、4人はそれぞれカップルになりますが、フォレストはレノーラを拒否して、倒してしまいます。
レノーラ:
「何すんのよ、バカ!ひどいわ」
「戦争でアレを飛ばされたの?」
カーラ:「あいつはバカなの?」
ダン小隊長:
「何だと?」
「『バカ』と呼ぶな!」
ダンはカーラを突き飛ばしました。
ダン小隊長:
「『バカ』と呼んだら許さんぞ!とっととうせろ!」「メス豚どもめ!」
「出てけ!」
ダンは勢い余って車椅子から出て、無様に倒れてしまいます。
それを見た女たちは嘲笑し、罵声を浴びせて出ていきました。
フォレストは手を貸そうとしますがダンは拒否しました。
フォレスト:
「せっかくの夜をすみません」
「あの女、タバコの味で...」
フォレストのナレーション:
「人にはそれぞれ嫌いなものがある」
「小隊長は『障害者』という言葉。僕は『バカ』という言葉だ」
ダン小隊長:「新年おめでとう、ガンプ」
この時からフォレストはダンに受け入れられたのだと思います。
22.ピンポン外交
そして、フォレストはまた大統領と会うことになりました。
本作品はアメリカ史の紹介でもあります。
TVナレーター:「ニクソン大統領が卓球チームを激励」
フォレストのナレーション:
「卓球チームがホワイトハウスに招待された」
「それで僕はまた行った」
「そしてまた合衆国大統領に会った」
「今度は安いホテルだった」
『雨にぬれても』〜B.J.トーマス〜の曲が流れます。
ニクソン大統領:「首都訪問を楽しんでるかね?」
フォレスト:「イエス、サー」
ニクソン大統領:「ホテルは?」
フォレスト:「アボットホテルです」
ニクソン大統領:「新築のいいホテルがある」
フォレスト:「そっちへ移りたまえ」
それはあの有名なウォーターゲート事件のあったホテルです。
ウォーターゲート事件(ウォーターゲートじけん、アメリカ英語: Watergate scandal)とは、1972年に起きたアメリカ合衆国の政治スキャンダル。1972年6月17日にワシントンD.C.の民主党本部で起きた中央情報局(CIA)工作員による盗聴侵入事件に始まった、1974年8月9日にリチャード・ニクソン大統領が辞任するまでの盗聴、侵入、裁判、もみ消し、司法妨害、証拠隠滅、事件報道、上院特別調査委員会、録音テープ、特別検察官解任、大統領弾劾発議、大統領辞任のすべての経過を総称して「ウォーターゲート事件」という。
~Wikipediaより~
ホテル従業員:「警備係ですが...」
フォレスト:
「向かいのビルに電気屋をやった方がいい」
「ヒューズが飛んだらしい」
「懐中電灯の光で眠れないんだよ」
「よろしく」
部屋の机には『ウォーターゲートホテル』と書いてありました。
TVのニクソン大統領:
「私は合衆国大統領を辞任します」
「フォード副大統領が明日、この執務室で大統領の宣誓を行います」
23.友との約束
フォレストは陸軍の除隊を告げられます。
フォレストのナレーション:
「こうして僕の軍隊生活は終わってしまった」
「僕は故郷へ戻った」
フォレストは久しぶりに母に会いました。
フォレスト:「戻ったよ、ママ」
フォレストの母:「分かってるわ」
フォレストのナレーション:「僕の留守中に大勢の客がうちに来ていた」
フォレストの母:
「大勢のお客が来たのよ」
「『うちの商品を使ってくれ』って」
「『ラケットを宣伝してくれ』って」
「2万5000ドルの小切手を置いていった人も」
フォレスト:
「自分のラケットがある」
「やあ、ルイーズ」
フォレストの母:
「それは分かってるけど、2万5000ドルの小切手よ」
「持っていれば、手になじむかもよ」
フォレストのナレーション:
「ママは正しかった。世の中は本当に不思議だ」
「バッバとの約束を守るために、僕はすぐ家を離れた」
「僕はバッバの家族に会いにバイユー・ラ・バトルへ行った」
バッバの母:「あんた、気は確か?それともバカなの?」
フォレスト:「バカをする者がバカです」
バッバの母:「そうね」
フォレストのナレーション:「もちろんバッバの墓参りもした」
フォレスト:
「やあ、バッバ、フォレスト・ガンプだよ」
「君の言った通りに全部計算したよ」
「僕の持ってる金は2万4562ドル47セント」
「少し使ったからね」
「こういう宣伝をした」
「『僕が中国へ行った時、愛用したのはライト印のラケット』」
「誰にでも分かる嘘だからママは構わないと」
「とにかく、そのお金でガソリンとロープと網、エビ捕り船を買った」
フォレストのナレーション:
「散髪に行って背広を買って、ママとレストランで食事」
「バス代とドクター・ペッパー3本」
『キャスト・アウェイ』でも主人公は救出された後にドクター・ペッパーを飲んでいましたね」
監督が好きなんだろうと思います。
持っているお金でフォレストは漁船を買いました。
漁師:「驚いたな、あんたバカかね?」
フォレスト:「バカをする者がバカです」
24.エビ捕り船
フォレストのナレーション:
「エビ捕りの方法はバッバから聞いていたけど、捕るのは難しかった」
フォレスト:「5尾だ」
漁師:
「あと2尾でカクテルが作れる」
「船に名前を付けないからツキがないのさ」
フォレストのナレーション:
「船の名なんて初めてだけど、付けるとしたら1つ」
「世界で一番美しい名前だ」
船のネームプレートには『JENNY』と描かれてありました。
ジェニーの近況のシーンが入ります。
ジェニーはディスコで仲間とマリファナを吸っていました。
肌もかさかさで目には強いアイシャドーがギラついていました。
薬でハイになり、マンションのベランダから飛び降りようとしていました。
ジェニーの『虚無感』は現実逃避に変わり、精神は死の手前まで追い詰められていました。
ベランダの強風にふと寒さを感じたジェニーには包み込んでくれる温もりを必要としていました。
涙を流し震えるジェニーは明るい夜空の月を眺めます。
ジェニーは誰かに助けを求めているようでした。
フォレストのナレーション:
「手紙は来なかったけど、いつも彼女のことを想い、幸せでいるようにと祈っていた」
「僕は彼女を想い続けた」
晴れやかな晴天の下、フォレストが諦めずにエビ漁を続けていると、知った顔が目につきました。
ダン小隊長でした。
フォレストは船から岸辺のダンに向かって手を振ります。
嬉しさのあまり船から海へ飛び込み、船は航行したまま、無人となりました。
フォレスト:「ダン小隊長!こんな所で何を」
未だにフォレストがダン小隊長と呼ぶのは名誉を重んじるダンへの思いやりなのだと思います。
もう皆さんフォレストの『バカ』な行為に騙されてはいけません。
ロバート・ゼメキス監督はすべて意図的ですよね。
ダン小隊長:「海で運試しをしたくてね」
フォレスト:「脚が無いのに?」
ダン小隊長:
「分かってる」
「手紙をくれたろ?」
「フォレスト・ガンプ船長の姿をこの目で見たくてね」
「それに言っただろ?『お前が船長になったら、俺は一等航海士だ』とね。約束を守ったのさ」
フォレスト:
「言っとくが、お前を『サー』とは呼ばんぞ」
「分かってます」
船員のいない船が波止場に突っ込んできました。
フォレスト:「あれが僕の船です」
25.希望の戦場
二人は朝と昼と夜となく、かつての戦場のように航海に出かけました。
『大統領殿』〜ランディ・ニューマン〜の曲が流れてきます。
ダン小隊長:
「いい予感がする」
「エビがいる。左へ舵を回せ」
ダンは敵を捜す隊長のごとく、脚を失った後の人生が嘘のように生き生きしています。
フォレスト:「どっちです?」
ダン小隊長:
「あっちだ、あっちだ!」
「舵を左へ回すんだ!」
「ガンプ、何してる!反対だ。左だ!」
「今度こそ大漁だぞ」
「見てろよ」
フォレストは網を引き上げますが、エビは中々捕れません。
フォレスト:「1尾もいませんよ」
ダン小隊長:「勘が外れたのさ」
フォレスト:「どこにいるんです?」
ダン小隊長:「神に祈るんだな」
実直なフォレストはさっそく教会へお祈りに行きます。
コーラスで黒人女性に混じってゴスペルまで歌う派手っぷりです。
フォレストのナレーション:
「毎日曜、教会に通った」
「小隊長も時々来たが祈るのは僕の役目だった」
フォレスト:「だめだ」
ダン小隊長:「頼りない神だな」
フォレストのナレーション:「本当に偶然だったがその時、神の力が働いた」
ある嵐の日の中、フォレストたちは漁をしていました。
ダンは戦場そのままに嵐に向かって叫んでいました。
まるで自分の運命に逆らうかのように抗うようでした。
ダン小隊長:「この船は沈まんぞ!」
フォレストのナレーション:
「僕は怖くて震えていたが、ダン小隊長は荒れまくった」
ダン小隊長:
「こんなものが嵐か?」
「笑わせるな!もっと風を吹かせてみろ」
「貴様と俺の対決だ!」
「俺は逃げも隠れもせんぞ!」
「俺を打ちのめせ」
「貴様の力でこの船を沈めてみろ!」
TVナレーター:
「ハリケーン『カルメン』は多大な損害を与え、特に沿岸のエビ漁業は壊滅的な被害を受け、漁船がこのような姿をさらしています」
「関係者の話では嵐に耐えたエビ捕り船はたったの1隻」
フォレストのナレーション:
「それからは大漁続き」
「エビはシュリンプ・カクテルやバーベキューに必要で、僕らのバッバ=ガンプ社のエビは売れに売れた」
「持ち船も増えてジェニー号は12隻」
「大きな倉庫に社名入りの野球帽」
「バッバ=ガンプ社の名は有名になった」
バス停の中年男性:「待てよ」
「君がバッバ=ガンプ・エビ会社の社長だと言うのかね?」
フォレスト:「ええ、景気のいい会社です」
男性は大笑いしました。
バス停の中年男性:
「こんな大ボラを吹く奴は初めてだよ!」
「こいつが百万長者だとさ」
男性は笑いながら去って行きます。
不思議とフォレストの近くには人が寄ってきます。
お婆さんが一人、ベンチでフォレストの話を聞いていました。
お婆さん:
「とにかく楽しいお話だったわ」
「あなたがとてもうまく一生懸命話したから」
フォレスト:「ダン小隊長の写真を?」
お婆さん:「ええ、拝見したいわ」
フォレストはお婆さんに『FORTUNE』誌に掲載されている自分とダンの表紙を見せます。
フォレスト:「これです」
お婆さんは目を点にして驚きました。
フォレスト:「もう少し小隊長の話を」
また漁船でのエピソードに戻ります。
26.感謝
ダン小隊長:
「フォレスト」
「命を救ってくれた礼を言うよ」
そう言ってダンはきれいな夕陽を背景に、まるで人魚のように自由に海へ飛び込みました。
脚を失った身体がまるでピチピチした魚のようでした。
ダンが飛び込んだ水しぶきがカメラ一面にまぶしく撒き散らされます。
とても美しい瞬間です。
そしてダンは何か満ち足りたように海中を背泳ぎで泳ぎました。
とても感動的な場面です。
フォレストのナレーション:
「口では言わなかったが、小隊長は神と仲直りしたのだ」
フォレストがダンとベトナムで会ってからこれまで、全く変わらなかったダンに対する敬意は、私たちも見習わなければならない、見逃せない態度だと思います。
フォレストのそばにいると皆が癒やされるのは、相手の存在そのものを無条件で認める彼の優しい心があるからだと思います。
ダンはエビ捕り漁で成功したという理由で、フォレストに礼を言ったのではありません。
彼の自信や自尊心を取り戻す手助けをしてくれたからに違いありません。
27.母の遺言
アメリカ史は続きます。
TVナレーター:「フォード大統領の暗殺未遂事件です」
フォレストに母の様態が悪いと連絡が入ります。
フォレストは急いで母のもとに駆けつけます。
2階のベッドに主治医といっしょにいました。
フォレストの母:「まあ、フォレスト」
主治医:「まっすぐ背骨が伸びたな」
フォレスト:「病気なの?」
フォレストの母:
「じき死ぬのよ」
「ここに来て座って」
フォレスト:「なぜ死ぬの?ママ」
フォレストの母:
「そういう時が来たのよ。そういう時がね」
「いいわね。死を怖がらないで」
「生の一部なんだから」
「誰も逃げられない運命なの」
「私がお前のママになったように。私なりに努力したわ」
フォレスト:「最高のママさ」
フォレストの母:
「自分の運命は自分で決めるの」
「神様の贈り物を生かして」
フォレスト:「僕の運命って?」
フォレストの母:
「それは自分で見つけるのよ」
「人生は『チョコレートの箱』。食べるまで中身は分からない」
それはフォレストの母の息子への最後のレクチャーでした。
自分の存在意義は自分で決める。
だからこそ、生気をもってエネルギッシュに生きていけるのだと思います。
はかなくして自死を選ぶ人も多くいらっしゃいます。
本人以外にそれを止めさせる権利はないのだと思います。
残されたものはつらいですが。
その代わりに...生きる選択をしてもらいたいがためにこういったヒューマンドラマが生まれるのだと思います。
きっかけや手助けや励ましを差し伸べることしかできない。
それは本人への敬意を示すことであり、運命でもあるのかなと思います。
もし当人の心がひどく侵されていて、落ち込んでいる場合、精神科の薬を服用することで自死したい感情から解き放つことはできるので、精神科医に連れて行ってほしいと思います。
フォレストのナレーション:「ママは何でも僕が分かるように説明した」
フォレストの母:「別れるのは悲しいわ」
フォレストのナレーション:
「ママは癌だった」
「火曜日に死んだ」
「花のついた帽子を買ってあげた」
「この話はそれだけだ」
フォレスト:「7番のバスが来ましたよ」
バス停のお婆さん:「またすぐ次のが来るわ」
そう言ってお婆さんはハンカチで涙を拭きました。
フォレスト:
「僕はフットボールのスターで戦争の英雄」
「有名人でエビ捕り船の船長」
「それに大学卒。市議会は僕に特別の仕事をくれた」
「小隊長との仕事はそれっきり」
「でも小隊長は僕の金をどこかのフルーツ会社に投資してくれて『一生食うに困らない』と」
投資先がベンチャー時代のアップルコンピュータなんですね。
フォレスト:「お陰で一つ心配が減ったわけです」
フォレストのナレーション:
「ママは言ってた。『必要以上の金は意味のない無駄な金』と」
「それで一部をごっそり教会へ寄付」
「一部は入り江の漁師共済病院へ」
「小隊長は僕がイカれてると言ったけど、バッバの取り分を彼のママへ」
「彼女は料理人暮らしをやめた」
「超リッチマンになった僕は無料で大好きな芝刈り」
「でも夜、何もする事がなく、誰もいない家にいるとジェニーの事を想った」
28.やすらぎのForest
フォレストは夜にジェニーの幻影をよく見るようになります。
フォレストのナレーション:「ある日、本物が...」
ジェニー:「やあ、フォレスト」
フォレスト:「やあ、ジェニー」
このシンプルな挨拶のような何気ない自然な優しさをジェニーは求めていたのでしょうか。
ジェニーはフォレストの優しさを取り込むかのように、懐かしい匂いを思い出すかのように抱きしめました。
フォレストのナレーション:
「ジェニーが戻ってきた」
「他に行く所がなかったのか、それとも疲れていたのか、何年も眠らなかったかのように眠り続けた」
「でも彼女が家にいる!」
「毎日散歩しながら僕はとめどもなくしゃべった」
「ピンポンの話、エビ捕り船の話、ママが天国へ行った話」
「僕がしゃべるのをジェニーは静かに聞いてた」
散歩先にジェニーの生家にたどり着きました。
ジェニーは履いていた靴を昔の生家に投げつけました。
そして取り憑かれたように辺りの石を何個も投げつけました。
倒れた後、ジェニーは泣き崩れました。
ジェニーは不幸の原因が家庭環境にあったとようやく知ったのです。
愛情を与えてもらえなかった家庭。
愛情飢餓感はここで生まれ、大人になってもずっと渇きっぱなしの人生。
人に依存するようになり、利用される人生。
自身の『無価値感』を払拭しようと理想像をつくりあげるも、努力は届かない。
次第に燃え尽き、『虚無感』を覚え、回避行動に移り、現実逃避に病む人生。
もう死ぬことでしか逃げられないようになってしまいました。
唯一ジェニーの中に残っていた温かみ。
それは幼い時にフォレストのそばで安心して寝たこと。
フォレストとの時々の再会と揺るがず、絶え間のない温かな手紙。
ジェニーの心の光でした。
フォレストはジェニーの傍らに優しく腰を下ろしました。
フォレストのナレーション:
「投げる石が足りない時もある」
「彼女の戻った理由はどうでもよかった」
「僕らはまた昔のように『豆と人参』になった」
「毎朝、僕は彼女の部屋に花を飾った」
「彼女は僕にこの世で最高の物をくれた」
それはバッバ=ガンプ社の帽子の色と同じ、ナイキのスニーカーでした。
フォレストのナレーション:
「ダンスも教えてくれた」
「ジェニーと僕は本当の家族のようだった」
「生涯で一番幸せな毎日だった」
ある夜、雑誌を見ているジェニーを見ているフォレスト。
ジェニーが寝るために2階の寝室へ行こうとしている所をフォレストは呼び止めました。
フォレスト:
「結婚しよう」
「僕はいい夫になるよ」
ジェニー:「分かってるわ」
フォレスト:「結婚はしたくない?」
ジェニー:「私なんかと」
フォレスト:
「僕を愛せないのかい?」
「僕は利口じゃないけど、愛は何かは知ってるよ」
それは以前にフォレストがジェニーに言われた言葉でした。
ジェニーにとって「愛」とは『もらう』ものでした。
子どもの頃からずっと、求めて求めて求め続けてきたものでした。
決してジェニーから『与える』ものではありませんでした。
ジェニーには『与える』愛がなかったのです。
人は自分を好きでないと、人に心から優しくすることはできません。
愛を『与える』ことはできません。
それは愛する唯一の資格です。
ジェニーはまだ自分の人生を受け入れていません。
まだ自分の境遇を呪っています。
人は自分の不幸をも受け入れることで初めて前に進むことができます。
自分を愛するとはそういうことです。
自分に対する『無条件の愛』『無償の愛』
そのようにして初めて自分の中の土壌から芽が出はじめて、『自我』が育ちます。
そこからたくさんの愛を人に『与える』ことができるのではないでしょうか?
ジェニーはフォレストが寝ている寝室にやってきました。
ジェニーは黙ってフォレストの横で添い寝しました。
ジェニー:「フォレスト、愛してるわ」
ジェニーとフォレストは身体を重ね合います。
次の朝、ジェニーは再びフォレストの元からいなくなりました。
ジェニーにあげた栄誉勲章を置いて。
今のジェニーにとってフォレストはあまりにも眩しすぎたのだと思います。
自身の身体しか『与える』ものがなかった。
フォレストを愛しているにもかかわらずです。
フォレストはジェニーがいなくなった寝室をじっと見つめます。
彼は何を思うのでしょうか。
幾日も考え続けます。
29.前に進むために
彼は再び走り出しました。
脚装具が取れてようやく走れるようになった幼少期。
ジェニーに挑まずに走れと言われたべトナムの戦場。
走ることが好きで『バカ』だと言われても走ってきた。
フォレストは走ることで自分を作り上げてきました。
フォレストのナレーション:
「その日、何の理由もなく僕は少し走りたくなった」
「道の外れまで」
「ついでに町の外れまで」
「郡の外れまで走る事にした」
「ここまで来たんだからついでに州を横断しよう」
「その通り僕はアラバマ州を横断した」
「何の理由もなく走り続けた」
「海まで」
「どうせここまで来たのだから、回れ右して走り続けよう」
「反対側の海に出ると、どうせだから、また回れ右して走った」
「疲れたら眠り、腹が減ったら何か食べた」
「もよおしたら、その辺で...」
バス停のお婆さん:「そんなに走り続けたの?」
フォレストのナレーション:
「走りながらママやバッバ、ダン小隊長の事を想った」
「そして誰よりもジェニーのことをいつも想った」
TVニュース:
「今日ですでに2年、アラバマ州の庭師、フォレスト・ガンプは走り続けてアメリカ大陸を横断しています」
TVナレーター:
「『走る男』フォレスト・ガンプは4回も大陸を横断。再度ミシシッピ川を渡ります」
記者A:「動機は?」
記者B:「世界平和のため?」
記者C:「ホームレス救済?」
記者D:「環境問題?」
記者E:「動物愛護?」
フォレストのナレーション:「理由もなく走る事が不思議らしい」
記者F:「なぜです?」
フォレスト:「走りたいからだよ」
フォレストのナレーション:
「走りたかった」
「僕のしてる事を見て、なぜか納得する者もいた」
一般人:「目からうろこが落ちた」
「彼こそ何かを悟り、人生に答えを見つけた人だ」
「あなたに従います」
フォレストのナレーション:
「道連れができた」
「人数はさらに増えた」
「さらに大勢が加わった」
「僕は『人々に希望を与えた』と」
「そんな事、僕には分からない」
「でも助けを求める人はいた」
ステッカー販売の男:
「すまんが助けて欲しいんだ」
「ステッカーの販売なんだが、あんたのひらめく頭でいい文句を考えてくれないか」
「気をつけろ!犬のクソを踏んだぞ!」
フォレスト:「よくある事さ」
ステッカー販売の男:「クソを踏むのが?」
フォレスト:「仕方ない」
フォレストのナレーション:「その男はステッカーの文句を思いつき、大儲け」
『SHIT HAPPENS』ステッカーは1980年代、流行した車のステッカーでした。
フォレストのナレーション:
「Tシャツを商売して全財産をスッた男もいた」
「だが僕の似顔絵も描けず、カメラも持ってない」
トラックが水たまりを跳ねて、フォレストは泥水を被ります。
Tシャツ販売人:「これで拭けよ。売れないTシャツだ」
フォレスト:「いい1日を!」
フォレストのナレーション:「その男もアイデアを思いつき、大儲けしたそうだ」
おなじみのスマイルマークの「HAVE A NICE DAY」Tシャツですね。
フォレストのナレーション:
「とにかく話したように、道連れが増えた」
「ママは言ってた『過去を捨ててから前へ進みなさい』と」
「走ったのはそのためだ」
「僕は結局3年と2ヶ月14日と16時間走りつづけた」
フォレストは突如走るのを止めて、後続で走る人たちに言いました。
一緒に走ってきた人:
「待て、何か言うぞ」
フォレスト:
「僕はとても疲れた」
「うちに帰る」
フォレストが逆方向に向かって帰ろうと歩いた時、モーゼが海を2つに分けたように人々は道を開けました。
一緒に走ってきた人:「俺たちは?」
30.胸を張って
フォレストのナレーション:
「こうして走る日々は終わり、アラバマへ戻った」
「ある日突然、ジェニーから手紙が『サバンナへ来て欲しい』とそれでここへ来たんです」
「僕をテレビで見て...」
「9番のバスでリッチモンド通りまで、そこで降りて左へ歩いて、ヘンリー通り1947番地のアパートです」
バス停のお婆さん:
「バスに乗る事はないわ」
「ヘンリー通りなら、あの道を少し行った所よ」
「あの道よ」
フォレスト:
「あの道?」
「ありがとう」
フォレストは大急ぎで走って行きました。
バス停のお婆さん:「幸運を祈ってますよ」
フォレストがジェニーのアパートの部屋のドアを開けると、とても明るいジェニーがいました。
ジェニー:
「フォレスト!」
「元気?入って」
フォレスト:「手紙が...」
ジェニー:「届いたのね」
フォレスト:「今ここに住んでるの?」
ジェニー:
「仕事から戻って片づいてないの」
フォレスト:
「いい所だ」
「エアコンもある」
フォレストはお土産にチョコレートを渡しました。
フォレスト:「少し食べたよ」
このジェニーの変わりっぷりは見ていてすごいですね。
あの病んでいたジェニー。
元気さとフォレストに会えた嬉しさでいっぱいです。
涙が込み上げてきますね。
ジェニー:
「あなたの記事を切り抜いたのよ」
「ほらね」
「走ってるあなた」
フォレスト:
「たくさん走った」.
「ずっとね」
ジェニー:
「どう言ったらいいか...」
「今まであなたにした事を全部、許して」
「私はずっとどうかしてたのよ」
ジェニーの家に一人の子どもが現れました。
ジェニー:
「アラバマの友達よ」
「ガンプさんにご挨拶を」
男の子:「こんにちは」
フォレスト:「こんにちは」
男の子:「テレビ見てもいい?」
ジェニー:「音を低くしてね」
フォレスト:「ママなのかい?」
ジェニー:
「そうよ」
「名前はフォレスト」
フォレスト:「僕と同じ?」
ジェニー:「父親の名を付けたの」
フォレスト:「父親が僕と同じ名前?」
ジェニー:「あなたがパパなのよ」
ジェニーはフォレストを愛情深くじっと見つめます。
フォレストはとても驚いてたじろぎます。
ジェニー:
「私を見て」
「私を見て」
「あなたは何もしなくていいのよ」
「いいわね?」
「いい子でしょ?」
フォレストはとても心配そうにしてジェニーに尋ねました。
フォレスト:
「本当にすばらしい子だ」
「でも、頭はどうなの?」
「どこか...」
ジェニー:
「とても利口よ。学校でも一番」
「話をしてやって」
とてもジーンとくる親子、家族の場面です。
実は今まで、フォレストが幼少時代からバカにされてきても、悲しむ場面は一度もありません。
いくらお母さんの愛情をたっぷり受けていても、実際は辛かっただろうと思います。
ジェニーが何度も離れていくのも、自分の境界知能のせいにしていたにちがいありません。
人は困難があると、一点に原因を集中させます。
フォレストは境界知能ゆえ、人と分かり会えない寂しさ、孤独感があったのだと思います。
名誉やお金では心の問題は解決しないのですね。
フォレストはそっと息子の隣に座りました。
まるで兄弟のようでした。
二人は隣の部屋のリビングでTVを見ているんですね。
ジェニーがそれをドア越しに見ている映像がとてもキレイなんです。
ジェニーが優しくのぞいている感じが出ていて、とても美しいシーンなんです。
31.結(むすび)
3人で公園に散歩に行きました。
ジェニーはフォレストに病気の事を告白します。
ジェニー:「私は病気なの」
フォレスト:「風邪でもひいたのかい?」
ジェニー:「ウィルスに感染して、医者もどう治療したらいいか分からないの」
フォレスト:
「僕と一緒に帰ろう」
「フォレストと一緒にグリーンボウの僕の家で暮らそう」
「僕が君の看病をするよ」
ジェニー:「結婚してくれる?」
フォレスト:「いいよ」
故郷の家で結婚式が始まります。
ジェニーはフォレストのネクタイを整えてあげました。
結婚式にダン小隊長が参列してくれました。
しっかりと2本脚で歩いていました。
フォレスト:
「ダン小隊長だ」
「ダン小隊長」
ダン小隊長:「やあ、フォレスト」
フォレスト:
「新しい脚だ。見てごらんよ」
「そう、新しい脚だ。オーダー・メイドの脚さ」
「スペースシャトルを作るチタン合金だ」
フォレスト:「魔法の脚だ」
ダン小隊長:「フィアンセのスーザンだ」
フォレスト:「ダン小隊長!」
スーザン:「よろしく」
フォレスト:
「ダン小隊長、僕のジェニーです」
「やっとお会いできたわ」
結婚式はしめやかに行われました。
優しい陽光に包まれたなごやかな式でした。
32.ジェニーの運命、フォレストの使命
ジェニーは最愛の母のベッドで眠っていました。
ジェニーはそれに気づいて起きます。
ジェニー:「ベトナムは怖かった?」
フォレスト:
「ああ」
「さあ...分からないな」
「時々雨が降りやんで星が出てくると、きれいだった」
「入り江に太陽が沈む時のようにね」
「水面がどこまでもキラキラ光る」
「山の湖もきれいだった。透き通ってて、上と下に2つの空があるようだった」
「それに砂漠の日の出」
「境が分からなかった」
「どこまでが天国でどこからこの世なのか」
「美しかった」
ジェニー:「一緒に見たかったわ」
フォレスト:「君もいたよ」
フォレストがそういうと、ジェニーは嬉しそうにフォレストの手を握りました。
ジェニー:「愛してるわ」
フォレストがベトナムで見た夜景、漁船で見た夕焼け、ランニングで見た空と湖。
これらはジェニーが恐れた『死』を和らげるためにフォレストは体験したのかもしれません。
今、この時のために。
それも神様の思し召しで運命のような気がしてなりません。
フォレストの母が死ぬ前にフォレストに諭しました。
死は運命であると。
フォレストはジェニーの死を受け入れたからこそ、旅立っていくジェニーに正気を保って慰めることができたのだと思います。
フォレストはジェニーの墓の前でジェニーに語りかけました。
フォレスト:
「君は土曜の朝、死んだ」
「僕らの樹の下に君を埋めた」
「君のパパの家はブルドーザーで潰したよ」
「ママはよく言っていた『死は生の一部なのよ』と」
「でも悲しい」
「小さなフォレストは元気だよ」
「また学校へ通い出す」
「毎日、3度の食事は僕が作ってる」
「そして、毎日髪をとかし、歯を磨かせてる」
「ピンポンも教えてる」
「とてもうまい」
「釣りもする」
「本も読む。とても利口な子だ」
「君にも見せたい」
「自慢できる」
「あの子からの手紙だよ」
「読むなと言われたからここに置いておく」
「ジェニー、僕には分からない。正しいのはママなのか、ダン小隊長だったのか」
「僕らには皆、運命があるのか、それとも風に乗ってたださまよってるのか」
「たぶん、その両方だろう」
「両方が同時に起こってる」
「君が恋しいよ。ジェニー」
「欲しいものがあったら、いつでも呼んでくれ」
フォレストの帰り際、数羽の鳥がさえずりながら飛んでいきました。
その声にフォレストは思わず、振り向きます。
それは祈りが叶えられた鳥になったジェニーの姿なのかもしれません。
30年前のフォレストとその母のように、フォレストと息子はスクールバスに乗り込もうとしています。
フォレスト:
「バスが来たよ」
「この本か」
フォレストJr.:「おばあちゃんがよくパパに読んだ本でしょ?」
フォレスト:「大好きな本だ」
本の中から鳥の羽根が落ちました。
バスが来て、フォレストJr.が初めて乗ろうとしています。
フォレスト:
「フォレスト、待って」
「お前を愛してる」
フォレストJr.:「僕もだよ、パパ」
フォレスト:「ここで待ってるよ」
バスの運転手(ドロシー):「これはスクールバスよ」
フォレストJr.:「あなたはドロシー。僕はフォレスト・ガンプ」
そしてさきほどの羽がフォレストJr.のバスを見届けるかのように、風に煽られて上昇して行きました。
こうしてフォレストの物語は終わりました。
33.終わりに
フォレストは英語で『Forrest』ですが、『For rest』(休息のために)や『Forest』(森林)をイメージすることができます。
たくさんの作品の中にもたくさんの木々に囲まれていました。
ここからもフォレストが『愛の人』だとなんとなく分かりますね。
皆さんはこのフォレストに訪れた幸運を、映画だから空想だと断言できますでしょうか?
フォレストの母が言うように、それは箱を開けて、あなた自身で食べてみないと分からないチョコレートです。
『偶然が偶然を産む』と閉めることもできるでしょう。
しかし、私はあえて『行動が行動を産む』と言いたいんです。
実は置いてあるチョコレートを美味しいと感じることができる方法があります。
まずはあなたがこのチョコレートは美味しいとイメージすることです。
前に言った『機能的心象』です。
そのイメージはあなたの『潜在意識』に直接たどり着きます。
この『潜在意識』こそが我々のパワーの泉です。
『潜在意識』からの欲求が『意欲』『意思』を生み出し、『行動』に移してくれます。
良いことも悪いこともです。
この食べてみるという『行動』こそが運を呼び寄せ、実現させるのです。
『行動』しながらも人はその都度イメージを変えることが出来ます。
そして最初は思いつきだった『行動』はその都度より良く更新され、『自己実現』へとつながるのだと思います。
フォレストとジェニーの二人の人物像をお分かり頂けたでしょうか。
『無償の愛』で育った人と『条件付きの愛』で育った人。
彼らはそのまま、『自分を愛せる人』と『自分を愛せない人』となります。
『自己肯定』の人と『自己否定』の人です。
『自己否定』の人はどうしたらいいでしょうか。
この人の周りは敵だらけになります。
そして、自分をも信じていません。
自分をしっかりと見つめることから始めないとなりません。
・人に依存しないと生きていけない・劣等感を持っているため、人が競争相手に見える・劣等感を持っているため、理想像の自分を追いかけ続ける・孤独である・人生の意味を見失っている・自分は無価値である
年を取り経験するうちに上記の理由によって『いきづらさ』があるはずです。
自分はこういった考えを持ってしまっていたと、認めることです。
そして、そんな自分や自分をこんなに追い込んだ環境を憎み、そして受け入れること。
そうすれば、他者があなたの考えに入ってくることはもう無くなっています。
これからあなたがすべき事が見えてくるはずです。
そこがあなたの『ルネッサンス』です。再興のスタート地点です。
自分で自分を『無償の愛』で包んであげなくてはなりません。
それは「あなたがありのままのあなたを愛する」ということです。
神様はあなたに五感という素晴らしいセンサーをくれました。
五感のおかげであなたはあらゆる恐怖から『用心』することができます。
『観る、聴く、触れる、味わう、匂う』という素晴らしい五感はあなたにいつも新鮮な気持ちよさを与えてくれます。
あなたは世界から『無償の愛』をもらうのです。
そうしていくうちに、あなたの心は満たされていくでしょう。
あなたから奪おうと思っても、あなたの心の中には『無償の愛』が無尽蔵にあります。
そんな朗らかで明るくなったあなたには、人がたくさん集まってくるでしょう。
人は暖かいところが好きなんです。
私は久々に『フォレスト・ガンプ』を見直しました。
私はフォレストの幸運に騙されていました。
「結局は運なのか。面白いユーモアのあるアメリカ史だった」と長年思っていたのです。
しかし、見直してみると全く、鑑定(みて)なかったんです。
私には時間が必要だったんだなと思いました。
もしかしたら、私の中では最高傑作かもしれません。バイブルかもしれません。それを皆さんに伝えたかったんです。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。
あなたの人生がこの作品に『映写』されて、共感されることを願って止みません。
またの作品でお会いできることを楽しみにお待ちしております。
それでは、ご自愛くださいませ。
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