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『マディソン郡の橋』~「初めて言う言葉だ。これは生涯に一度の確かな愛だ」~

マディソン郡の橋

Bridges of Madison County

 

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良識があるアメリカ映画

 

昨今、日本では不倫の話題が世間でにぎわっていますね。

 

この作品も不倫がテーマです。

 

意見は賛否両論分かれると思います。

 

失楽園』のように、欲望のまま不倫して、やがて二人は勝手に死んでいく。

 

そんな身勝手な恋愛ではないんです。

 

マディソン郡の橋』の主人公は、夫、子供の心情や将来のこと、悩んで悩んで葛藤します。

 

それが、アメリカ映画なんです。

 

認められないんですね。そんなこと、アメリカ人が、アメリカの社会が。

 

キリスト教が主な国ですから、倫理観がしっかりしています。

 

すべてのことが自由主義ではないんです。

 

あなたに観て頂きたいのは、

 

主人公の心の中の葛藤、

 

純粋な乙女のような恋心、

 

不倫を知った子供たちの心の揺れ、

 

そしてこのメロドラマの見事な演出です。

 

母の遺品から出てきたモノは...

 

冒頭シーンは、一人の老女の遺品整理から始まります。

 

ともに40歳代の長男のマイケルと長女のキャロリン、マイケルの妻、弁護士が立ち会っています。

 

母の遺言は自分の遺体を火葬して、ロズウェル橋に遺灰を撒いてほしいとありました。

 

マイケル:

「火葬だなんてバカな!」

 

「うちは火葬じゃない」

 

「父さんが前から夫婦の墓地を買ってある」

 

「母さんは頭がボケたんだよ」

 

弁護士:

「遺言は明確だ」

 

「”遺灰をローズマン橋から撒いてくれ”と」

 

マイケル:「何だって?」

 

キャロリン:「本当にママが書いたの?」

 

弁護士:

「ルーシー・ディレー二ーが立会人だ」

 

「彼女に聞くがいい」

 

マイケル:「ルーシー?」

 

キャロリン:「ディレーニー夫人よ」

 

マイケル:

「法的にはどうあれ、火葬にして灰を橋から撒くだと?」

 

「灰は散って墓参りもできやしない」

 

「絶対に反対だ」

 

「反キリスト教的だよ」

 

そして弁護士の預かり物の中から、写真が出てきます。

 

それは、白い屋根の付いた橋の前で少女のように笑顔で写っていた母フランチェスカでした。

 

キャロリン:

「マイケル、見て」

 

「見たことある?」

 

「1965年の封付よ」

 

遺書を読み進めるキャロリンは母が不倫をしていたことを知ります。

 

彼女はマイケルを呼び寄せ、事情を知らせます。

 

キャロリン:「マイケル、マイケル、ちょっとこっちへ」

 

マイケル:「どうした?」

 

しばらく二人で話した後、

 

マイケル:

「もし、よければ箱の中身は僕とキャロリンで調べる」

 

「君らの時間を取るだけだから」

 

「後で事務所の方に連絡します」

 

そして、兄弟二人だけで遺品の中の手紙を読みます

 

母の不倫を知った子供たち

 

男:

「僕は必死に思い込もうとしています」

 

「僕らは別々の人生を歩むべき運命なのだと」

 

「なのに、カメラをのぞくとあなたが見える」

 

「記事を書き始めるとあなたを想って書いている」

 

「僕らはあの4日間のためにお互いに出会うために生きていたのです」

 

マイケル:

「やめてくれ、焼き捨てろ」

 

「聞きたくない、捨てちまえ」

 

しかし、気になってしょうがないマイケルは、

 

マイケル:「それから?」

 

キャロリン:

「こう書いてあるわ、”万一連絡が必要ならナショナル・ジオグラフィック誌へ”」

 

「カメラマンなのよ」

 

「”手紙はこれ限りと”」

 

「そして、あとはこれだけ、”愛しています、ロバート”」

 

マイケル:「ロバート?呆れたな。殺してやる」

 

キャロリン:

「もう亡くなっているのよ、これを見て、彼の弁護士から」

 

「遺品はすべてママに残すって」

 

「ロバートの弁護士より、故人の希望で”遺体は火葬にしてローズマン橋から灰を撒け”と」

 

マイケル:

「やっぱり!入れ知恵されてたんだ」

 

「その変態野郎が母さんをたぶらかしたんだ」

 

「いつ死んだって?」

 

キャロリン:「1982年よ」

 

マイケル:

「じゃあ、父さんが死んで3年後だ」

 

「僕らが子供のころか?」

 

「信じられない」

 

「母さんはそいつと寝たのかな?」

 

キャロリン:「兄さんって一体いつまで子供なの?」

 

マイケル:

「だが、僕の母さんなんだぞ」

 

「あの母さんが...」

 

キャロリン:「何だっていうの?」

 

マイケル:「考えたくはないさ」

 

キャロリン:

「私に一言も言わずに...」

 

「週に1度は必ず電話で話してたのよ」

 

マイケル:

「父さんは知っていたのか?」

 

「封筒の中にまだ何か?」

 

そしてキャロリンが封筒の中を探すと1本の鍵が出てきました。

 

心当たりのあったキャロリンは母の大事にしていた木箱の鍵だとわかります。

 

その箱の中にはペンダントとカメラ、メモ、ドレス、3冊のノート、そしてマイケルとキャロリン宛の手紙が出てきました。

 

母の生き様を子供に伝えたい

 

キャロリン:「読んで」

 

マイケル:「読めよ」

 

フランチェスカの手紙:

「1987年1月、愛するキャロリン、マイケルも一緒かしら?」

 

「彼はこれを一人で読めないだろうし、理解できないでしょう」

 

「あなたたちを愛してることをまず言っておきます」

 

「元気なうちに心の整理と身辺整理をしたいのです」

 

マイケル:「だじゃれのつもりか?」

 

フランチェスカ

「貸金庫を開ければ、きっとこの鍵が見つかるはずです」

 

「子供に語りにくい話を、なぜ自分の死と共に葬らないのか」

 

「でも、年をとると恐れは薄れるのです」

 

「そして愛する人に知ってほしいと思うのです」

 

「この短い人生をどう生きたかを」

 

「どんな人間だったかを知ってもらわずに死ぬなんて、とても悲しいことです」

 

「親は子供を無条件で愛します」

 

「でも子供の親に対する愛は複雑」

 

「あなた達にも反抗期がありました」

 

マイケルとキャロリンは涙ながらに微笑みました。

 

フランチェスカの手紙:

「彼の名はロバート・キンケイド」

 

「写真家で1965年に雑誌の仕事で屋根のある橋を撮影しにここへやってきたのです」

 

「雑誌が出た時は町の人々は大得意」

 

「うちも購読を始めました」

 

キャロリンは箱の中から雑誌を見つけます。

 

キャロリン:「ローズマン橋よ」

 

そして、雑誌の中にキンケイドの写真を見つけます。

 

キャロリン:「彼がロバート・キンケイド?」

 

写真の中で彼が母のペンダントをつけているのを見つけました。

 

キャロリン:「ママのペンダントだわ」

 

フランチェスカ「どうか彼を恨まないで」

 

「すべてを知れば、彼を許し感謝さえ感じるはずです」

 

マイケル:「感謝?」

 

フランチェスカ

「3冊のノートを読んで下さい」

 

「あれはイリノイ州の州祭りがあった週」

 

「キャロリンが子牛を品評会に出すので、あなた達は出かけた」

 

ここからシーンが過去に変わります。

 

出会いは突然に

 

フランチェスカ

「出発は日曜の夜で、正直言って、私はほっとしました」

 

「帰るのは金曜日、4日間、たった4日間」

 

フランチェスカはオペラをかけて食事の準備をしています。

 

イタリア出身の彼女は少し、アメリカ人とは感性が違うんですね。

 

音楽でオペラを流したり、アイスティーを飲んだりします。

 

読書家でイェーツの詩集なんかも読んでいます。

 

食事のために部屋に入ってきた夫リチャードと17才のマイケルは強く戸を締めます。

 

フランチェスカ「静かに戸を閉めてっていつも言ってるでしょう」

 

続いて2階から降りてきたキャロリンはフランチェスカがかけていたオペラの曲をポップスの曲に変えます。

 

フランチェスカが家族のために我慢をしている描写です。

 

フランチェスカは食事前にお祈りをしてと言いますが、キャロリンは”お祈り”とだけ言って食事を食べ始めてしまいます。

 

キャロリンは今、反抗期なんですね。

 

フランチェスカは食事を作り終えて一息して、家族が食べるのを見守ります。

 

そして食事をする家族を見ながら、微笑みます。

 

でも、どこかさみしげな退屈そうな表情をします。

 

フランチェスカは家族の世話でとても忙しい日々を送って過ごしています。

 

家族を旅行に見送ったフランチェスカは、好きなオペラをかけて一人の時間を満喫します。

 

のんびり羽を伸ばしながらも、家の片付けなどをしていました。

 

そして小休憩で軒先でアイスティをひとり飲んでいると、1台の車がやって来ました。

 

ワシントンのカメラマンのロバート・キンケイドです。

 

彼は紳士的な優しい雰囲気が漂っていました。

 

ロバート:「どうやら道に迷ったらしいです」

 

フランチェスカアイオワで間違いない?」

 

ロバート:「ええ」

 

フランチェスカ「じゃあ、大丈夫よ」

 

ロバート:

「橋を探してるんです」

 

「屋根がある橋が近くに?」

 

フランチェスカ「ローズマン橋?」

 

ロバート:「それです」

 

フランチェスカ「じゃあ近いわ、3キロ先よ」

 

ロバート:「どっちへ?」

 

フランチェスカ「そっちよ、カターの角で左へ」

 

ロバート:「カター?」

 

フランチェスカ

「カター農場よ」

 

「小さな家だけど、ほえつく黄色の犬がいるわ」

 

ロバート:「ほえつく黄色の犬...」

 

フランチェスカ

「そのまま真っ直ぐ行くと道が二股に分かれているの」

 

「数百メートルほど先よ」

 

ロバート:「二股はどっちへ?」

 

フランチェスカ

「右よ。それから...」

 

「違ったわ、ごめんなさい」

 

「ピーターソンの所を、ピーターソン農場よ。その先の古い校舎を左へ」

 

「道に名前があれば楽なのに...」

 

ロバート:「そうですね」

 

フランチェスカ

「案内しましょうか?」

 

「それとも説明する?」

 

「どっちでもあなたのいいように」

 

ロバート:「でもご迷惑では?」

 

フランチェスカ

「いいえ、アイスティを飲んで一息入れようと...」

 

「靴を履くわ」

 

ロバートはにこやかにフランチェスカの後ろ姿を見つめます。

 

そして、フランチェスカは道案内のため車に乗り込みます。

 

屋根付きのローズマン橋へ

 

ロバート:「それで?」

 

フランチェスカ「出て右に曲がるの」

 

ロバート:「出て、右へ」

 

時折、カメラがフランチェスカの視線に変わるんです。

 

それがフランチェスカの興味や心情などを伝えていて、見ているこちらがドキドキします。

すばらしい演出です。

 

ロバート:アイオワの匂い、この土地独特の香りがします」

 

フランチェスカ「そう?」

 

ロバート:

「言葉では言えないが、土の匂いです」

 

「肥沃な大地の匂い」

 

「生きてると言うか...」

 

「感じない?」

 

フランチェスカ「さあ、住んでると...」

 

フランチェスカが田舎に飽き飽きしているのがよくわかります。

 

ロバート:

「分からない?」

 

「いい匂いです」

 

フランチェスカ「ワシントンの方?」

 

ロバート:「20才過ぎまで暮らして、結婚してからシカゴへ」

 

フランチェスカ「それで今はワシントン?」

 

ロバート:

「離婚してね」

 

「いつ結婚を?」

 

フランチェスカ「大昔よ」

 

ロバート:

「大昔か」

 

「ご出身は? 失礼かな?」

 

フランチェスカ

「いいえ、いいのよ」

 

「私の出身はイタリアなの」

 

ロバート:

「イタリア?」

 

「イタリアからアイオワへ?」

 

「イタリアのどこ?」

 

フランチェスカ:「イタリアの東のバリよ。誰も知らない小さな町」

 

ロバート:「バリ? 知ってます」

 

フランチェスカ「まさか、本当に?」

 

ロバート:

ギリシャで仕事があって、バリを通ってブリンディジへ」

 

「美しい所だったので、汽車を降りて数日滞在しました」

 

フランチェスカ「美しかったので途中下車を?」

 

ロバート:「ええ、そうです」

 

ロバートはダッシュボードの中のタバコを取ろうとして、彼女の脚に少し触れてしまいます。

 

フランチェスカはロバートを少し意識するんですね。

 

そして、タバコを顔に差し出される時もびっくりしています。

 

タバコをもらったフランチェスカはタバコに火をつけてもらいます。

 

外から風が入ってきているので火が消えないように、ロバートの体と手で風を防ぐために、ロバートは彼女の顔に近づくんです。

 

そういうのを何気に観客に見せる演出がうまいです。

 

いやらしくないんですね。

 

ロバート:「それで、アイオワには何年?」

 

フランチェスカ「もう長いわ」

 

あまりその話はしたくないんですね。

 

フランチェスカは話題を戻します。

 

フランチェスカ「本当に見知らぬ町に降りたの?」

 

ロバート:「ええ」

 

そのローズマン橋への途中、2つの古い橋を渡り、やっとローズマン橋に着きます。

 

フランチェスカ「あの橋よ」

 

ロバート:

「美しい!」

 

「写真になる」

 

周りはトウモロコシで埋め尽くされた綺麗な橋が現れました。

 

魅力的なロバート・キンケイド

 

フランチェスカは橋の隙間からロバートの姿をじっと見つめます。

 

ロバート:

「暑いですね」

 

「荷台に飲み物がありますよ」

 

フランチェスカ「頂くわ」

 

フランチェスカは車の荷台に取りに行きます。

 

旅行カバンから下着が見えて、気になります。

 

フランチェスカは喉を潤している間にロバートを見失います。

 

ロバートは辺りの花を摘んで探していて、フランチェスカにプレゼントします。

 

ロバート:

「あなたに花を」

 

「女性に花を贈る、時代遅れかな?」

 

「感謝のしるしです」

 

フランチェスカ「いいのよ、毒草だけど」

 

ロバートは驚いて花を地面に落とします。

 

フランチェスカは大笑いして、

 

フランチェスカ

「冗談よ、ごめんなさい」

 

「本当にごめんなさい」

 

ロバート:「いじわるを言う趣味が?」

 

フランチェスカ

「まさか、わたしったら...」

 

「すてきだわ」

 

「ごめんなさい」

 

このやり取りで二人の距離がグッと縮まります。

 

同時に素敵な音楽が流れてきます。

 

二人は家に戻ってきます。

 

ロバート:「本当に助かりました、ジョンソンさん」

 

フランチェスカフランチェスカよ」

 

ロバート:「ロバートです」

 

フランチェスカ「家でアイスティを飲みませんか?」

 

ロバート:「ええ」

 

刺激的な会話

 

フランチェスカはもらった花を花瓶に挿します。

 

ロバート:「毒草では?」

 

フランチェスカ「ごめんなさい、なぜあんなことを言ったのかしら」

 

ロバート:「お子さんは何歳?」

 

フランチェスカ「17と16よ」

 

「皆変わっていく」

 

ロバート:

「それが自然の法則です」

 

「変化を恐れず、こう思うんです」

 

「すべて変化する、それが自然なのだと」

 

「かえって支えになります」

 

フランチェスカ

「そうかもね」

 

「でも、私は変化が怖いの」

 

ロバート:「どうかな」

 

フランチェスカ「なぜ?」

 

ロバート:

「イタリアからアイオワに来た」

 

「それは大きな変化だよ」

 

フランチェスカ

「それはリチャードが軍隊にいて、彼とナポリで出会ったからよ」

 

アイオワを知りもせず、アメリカに行けるんだと思ったわ」

 

「リチャードがいてくれたし...」

 

ロバート:「どんなご主人?」

 

フランチェスカ「とても真っ当な人」

 

ロバート:「真っ当?」

 

フランチェスカ

「そう、いいえ無論それだけでは...」

 

「働き者で家族を大切にして、正直で優しい」

 

「いい父親よ」

 

ロバート:「そして、真っ当?」

 

フランチェスカ「ええ、真っ当」

 

ロバート:アイオワに来てよかったわけだ」

 

フランチェスカ「うーん、そうね」

 

ロバート:「正直に、誰にも言いませんよ」

 

フランチェスカ

「こう答えるべきね」

 

「後悔はないわ」

 

「静かな所で人々は皆、親切」

 

「大体はその通りよ」

 

「静かなところで皆いい人たち、普段はね」

 

「病気とケガとか困っていると近所の人が来て、コーンや麦の収穫を手伝ってくれる」

 

「車はロックせず、子供を自由に遊ばせても、危険はない」

 

「本当にいい人たちよ」

 

「そのことはすばらしいと思うわ」

 

「でも...」

 

ロバート:「でも?」

 

フランチェスカ「わたしが少女の頃描いていた夢とは違うの」

 

ロバート:

「この間、こんなことを、車を走らせてて時々書き留めるんです」

 

「昔の夢はよい夢」

 

「叶わなかったがいい思い出」

 

二人は顔を見合わせます。

 

ロバートは照れくさそうにして、

 

ロバート:

「何となくいい文句に思えてね」

 

「とにかく気持ちは分かります」

 

フランチェスカ

「夕食をいかが?」

 

「町にはろくなものがないし、独りで食べるのよ」

 

「私も独り」

 

ロバート:「そうだな、喜んで」

 

「家庭料理は久しぶりです」

 

フランチェスカは井戸水で体を洗うロバートの体をこっそり見ます。

 

フランチェスカは主婦から女性になってきているんですね。

 

フランチェスカは自分に言い聞かせます。

 

フランチェスカ「気は確か?」

 

それでも、徐々にロバートに引かれていくんですね。

 

フランチェスカは楽しそうにイヤリングを付けました。

 

二人の夕食

 

ロバート:「手伝いましょうか?」

 

フランチェスカ「手伝う? 料理を?」

 

ロバート:「男だってできる」

 

フランチェスカ「いいわ」

 

座って黙々と食べるフランチェスカの家族と対照的に描かれてますね。

 

ロバートは近づき、手を伸ばしてフランチェスカの向こう側の食材を取るんです。

 

ロバートは独り身だからか、それを取ってくれと言わず、自分で取るような癖がついているのでしょうか。

 

フランチェスカはロバートを意識してしまいます。

 

ロバートは車のビールを取りにドアを開け、優しく締めます。

 

フランチェスカ「いい人...」

 

とつぶやきます。

 

夕食になり、ロバートの旅の話で二人は盛り上がりました。

 

フランチェスカ

「今までで一番面白かった所は?」

 

「それとも、もう話し疲れた?」

 

ロバート:

「あなたは世間知らずだな」

 

「男は自慢話が大好きなんですよ」

 

フランチェスカは”世間知らず”という言葉に敏感に反応しました。

 

フランチェスカは田舎ぐらしで何も知らないことにコンプレックスを持っています。

 

フランチェスカの表情を見たロバートは、

 

ロバート:「すみません、バカなことを言ったかな?」

 

フランチェスカ「ど田舎の主婦が相手では退屈じゃないかと」

 

ロバート:

「ど田舎? あなたの家ですよ」

 

「退屈だなんて」

 

ロバートは夜の散歩にフランチェスカを誘います。

 

ロバート:

「いい所だな」

 

「今までに行った一番いい所です」

 

「”月の金のリンゴ、太陽の金のリンゴ”」

 

フランチェスカ

「イェーツね」

 

「”さまよえるアンガスの歌”」

 

ロバート:

「いい詩人です」

 

「リアリズム、無駄の無さ、官能性、美、魔力」

 

「僕のアイルランドの血に合う」

 

フランチェスカ

「うちで何か飲みませんか?」

 

「コーヒーかブランデー」

 

フランチェスカは外に出たことで、急に罪悪感が芽生えました。

 

ロバート:フランチェスカ、大丈夫?」

 

フランチェスカ、悪いことはしていない」

 

「お子さんにも話せる」

 

フランチェスカ「そうね」

 

そう言って、ロバートのグラスを受け取り、乾杯しました。

 

子供たちの反応

 

マイケル:

「母さんを酔わせたんだ」

 

「無理やり犯されたんだ」

 

キャロリン:「やめて、違うわ」

 

「素敵な人だわ」

 

マイケル:「すてき? 人妻を誘惑して?」

 

キャロリン:

「人妻を誘惑したからって悪人では」

 

「例えば、うちのスティーヴ」

 

「女に弱くて、いつも嘘ばかり」

 

「でもいい人間よ」

 

「夫としては落第」

 

マイケル:「そんなひどい目に?」

 

キャロリン:「いいのよ、別れないわたしが悪いんだから」

 

マイケル:「別れれば?」

 

キャロリンは母の気持ちが少し分かるんですね。

 

夜明けの語らい

 

フランチェスカ

「質問してもいい?」

 

「なぜ離婚を?」

 

ロバート:

「僕は旅ばかり」

 

「なら、なぜ結婚したか?」

 

「戻る所が欲しかったんです」

 

「旅ばかりだと自分を見失う」

 

「ところが、僕は旅をしてる方が自分を見いだせた」

 

「世界中が僕の家」

 

フランチェスカ「寂しくならない?」

 

ロバート:

「寂しさは感じません」

 

「世界中に友達がいていつでも訪ねられる」

 

フランチェスカ「女のお友達も?」

 

ロバート:「僕だって僧侶じゃありません」

 

フランチェスカ「でも、誰もいらない?」

 

ロバート:

「すべての人をほしいんです」

 

「人間が好きだ、皆に会いたい」

 

フランチェスカ

アイオワでは会うのはいつも同じ人ばかり」

 

「だからディレーニーさんとルーシーの不倫で町中大騒ぎ」

 

ロバート:

「よくわかります」

 

「こういう考え方のせいです」

 

「これは僕のもの、彼女は僕のものと手で囲ってしまう」

 

フランチェスカ:「独りぼっちが怖くない?」

 

ロバート:

「いいえ、全然」

 

「僕にも謎です」

 

フランチェスカ「後悔はない?」

 

ロバート:「後悔?」

 

フランチェスカ「離婚したことよ」

 

ロバート:「いいえ」

 

フランチェスカ「家族がいなくても?」

 

ロバート:「それを選ぶ人間もいます」

 

フランチェスカ

「自分の好きに生きるわけ?」

 

「他人はどうなるの?」

 

ロバート:「人間は好きです」

 

フランチェスカ「特定の関係は避ける」

 

ロバート:「愛は同じです」

 

フランチェスカ「違うわ」

 

ロバート:

「違うかもしれないが、悪いことじゃない」

 

「道を外れてもいません」

 

フランチェスカ「誰もそんなこと...」

 

ロバート:アメリカ人の頭は家族礼賛の倫理に惑わされているんです」

 

「僕のような男にはそういうレッテル”家庭の幸せを知らず、世界をさまよう哀れなやつ”」

 

フランチェスカ

「惑わされて家庭を持ったと言うの?」

 

「アフリカを知らなくても自分で人生を生きてるのよ」

 

フランチェスカは自分の人生を重ね合わせます。

 

ロバート:「離婚もできる?」

 

フランチェスカ「まさか、何を言うの?」

 

ロバート:「すみません、言い過ぎました」

 

ここではお互いのアイデンティティを守っているんですね。

 

どちらも一歩も引けません。

 

フランチェスカ「なぜそんな質問を?」

 

ロバート:「質問し合ってた流れでつい...」

 

フランチェスカ

「私はただ話をしていたのに」

 

「何も分かってない単純な女だというような質問を」

 

ロバート:

「悪かった、謝ります」

 

「では、夜明けの橋を」

 

「失礼します」

 

フランチェスカ「ごめんなさい」

 

ロバート:

「謝るのは僕です」

 

「あんな質問を...バカでした」

 

フランチェスカ「せっかくの夜を」

 

ロバート:

「いいえ、楽しい夜でした」

 

「最高の夜です」

 

「あの散歩」

 

「それに楽しい話とブランデー」

 

「あなたはいい人だ」

 

「ブランデーはまた役に立ちますよ」

 

「もう一つ、フランチェスカ、あなたは単純じゃない」

 

ロバートはフランチェスカの生き方を尊重していたんですね。

 

芯を持った強い女性であることを。

 

そして、ロバートは出ていきます。

 

彼を追いたい時に夫リチャードから電話がかかってきました。

 

話もうわの空でロバートの方を見てを見送っていました。

 

一晩中話をして、夜が明けようとしていました。

 

もう一度会いたい!

 

眠れないフランチェスカはイェーツの詩を読み返しました。

 

また琴線に触れるような音楽が流れ、彼女は自分の首筋を触り、着ているローブを解き、夜風に体を涼ませます。

 

私はまだ、女として大丈夫かしらと考えているかのようです。

 

すごく哀愁が漂った、フランチェスカのかわいいシーンです。

 

夜明け前の綺麗な空が見える書斎でフランチェスカはメモを書きます。

 

それはロバートへの誘いのレターでした。

 

イェーツの詩に乗せて書いています。

 

フランチェスカのメモ:

「白い蛾が羽を広げる頃、また夕食にどうぞ」

 

「お仕事が終わった後、何時でも構いません」

 

そして車をローズマン橋まで走らせ、メモを橋に残します。

 

夜明け前、黄色い犬が並走する美しいシーンです。

 

フランチェスカが朝の畑仕事から帰ると、電話がなっていました。

 

ロバートからだと思ったフランチェスカは急いでトラクターから飛び降り、走って電話を取りました。

 

フランチェスカの電話の声:「ジョンソンです」

 

ロバートの電話の声:

「ロバート・キンケイドです」

 

「メモをありがとう」

 

「イェーツの詩も」

 

「読まずに先に撮影してしまいました」

 

「光を逃したくなくて」

 

「喜んで伺いますが、遅くなりそうです」

 

「ホリウェル橋を撮りたいので」

 

「9時すぎかな」

 

フランチェスカの電話の声:

「いいわよ、お仕事が第一ですもの」

 

「何か作っておくわ」

 

ロバートの電話の声:「それとも一緒にどうです?」

 

フランチェスカの電話の声:

「いいわ、橋の所までうちの車で行くわ」

 

「いい?」

 

「何時に?」

 

ロバートの電話の声:「6時は?」

 

フランチェスカの電話の声:「いいわ」

 

ロバートの電話の声:「それじゃ...」

 

フランチェスカはとても上機嫌になり、貯金箱のお金を取り、町に買い物に行きます。

 

そして、素敵なドレスを買いました。

 

ルーシーという女性の不倫が街中の噂になっています。

 

ロバートが食事をしているレストランにルーシーがやって来ます。

 

周りの客も店員も皆、不倫のことを知っているんですね。

 

白い目で彼女を見ます。

 

ロバートはルーシーに隣の席を譲ってあげます。

 

店員の態度も何しに来たかのように振る舞います。

 

カフェの店員:「それで、ご注文は?」

 

ルーシー:「いいえ、気が変わったので...」

 

ルーシーは店を出ました。

 

周りの態度にルーシーは悲しみ、車の中で一人泣きます。

 

田舎らしい、厳格な倫理観。排他的なところです。

 

そういう現場を見たロバートは、フランチェスカに連絡します。

 

もし、迷惑がかかるなら夕食はキャンセルしてもいいと言います。

 

フランチェスカはそれでも会いたいと言います。

 

ロバートの電話の声:

「変に取られると困るが、会うのはマズくない?」

 

「町でルーシーって人を見かけてね」

 

フランチェスカの電話の声:「聞いたのね」

 

ロバートの電話の声:「雑貨屋のおやじさんからね」

 

フランチェスカの電話の声:「彼は町の放送局よ」

 

ロバートの電話の声:

「僕の結婚よりその不倫に詳しくなった」

 

「君がマズいと思うなら、今夜は取り消そう」

 

「僕はそういう判断が下手でね」

 

「君を困った立場に置きたくない」

 

フランチェスカの電話の声:

「よく分かるわ」

 

「お気遣いありがとう」

 

「ロバート、でも会いたいわ」

 

「とにかく橋の所で会って、あとはなりゆきで」

 

「私は平気よ」

 

ロバートの電話の声:「分かった、じゃあ橋で」

 

運命の4日間

 

今度はホリウェル橋で会いました。

 

白い屋根の付いた美しい橋です。

 

そこでロバートは橋を背景にフランチェスカを撮りました。

 

照れた少女のようなフランチェスカが素敵です。

 

ロバートはフランチェスカの料理を手伝ったり、テーブルを整えたりして、フランチェスカにとても優しく接します。

 

フランチェスカの心の中:

「たった数分前、彼が使った浴槽」

 

「彼もここで体を洗ってた」

 

「とてもエロチックに思えた」

 

「彼のすべてが私にはエロチックに思えた」

 

そして、フランチェスカはドレスに着替えて来ました。

 

フランチェスカ「何なの?」

 

ロバート:「息が止まった」

 

「正直に言うとね」

 

「男なら皆、息を止めてうめく」

 

心が通じ合おうかというその時に、電話が鳴ります。

 

フランチェスカは迷いながらも電話に出ます。

 

それは近所の友人のマッジからでした。

 

彼女はロバートの体に触れながら、マッジと会話します。

 

そして、二人は恋人関係になります。

 

ここで電話の相手が夫でないのがいいんですね。

 

もし夫だったら作品の品が無くなりますね。

 

アメリカ映画のいいところです。

 

キャロリン:「どうしたの?」

 

マイケル:「外の空気を吸う」

 

キャロリンはマイケルなら当然そうなると思い、笑いました。

 

フランチェスカ「どこかへ連れて行って」

 

「あなたが行ったことのある所へ」

 

「地球の反対側へ」

 

ロバート:「イタリアは?」

 

フランチェスカ「いいわね」

 

ロバート:「バリは?」

 

フランチェスカ「汽車を降りて、それからどうしたの?」

 

ロバート:「駅を知ってるだろ?」

 

フランチェスカ「ええ」

 

ロバート:「向かいに日除けを掛けたレストランが...」

 

「アランチノを食わせる」

 

フランチェスカ「アラッチノよ」

 

「店の名は”ゼッポリス”」

 

ロバート:「そこでコーヒーを飲んだ」

 

フランチェスカ「席は入り口の側?それとも教会に面してた?」

 

ロバート:「教会側だ」

 

フランチェスカ「私もそこに座ったわ」

 

「今日のように暑い日だった」

 

「買い物のあとで足元のいくつもの袋をゴソゴソ動かしてた」

 

「...話の続きを忘れたわ」

 

ロバート:「忘れていい」

 

フランチェスカの心の中:

「これからどうすればいいのか」

 

「彼はそれを読み、自分を捨てて、私を満足させてくれた」

 

「これが自分だと思っていた女はどこかへ消えた」

 

「私は別人となり、でも真の自分を見出していた」

 

フランチェスカはロバートに7歳の誕生日から身につけているペンダントをロバートに渡しました。

 

ロバート:「僕にはできない」

 

「一生を数日で生きることさ」

 

ロバートは彼女について来てほしいんですね。

 

これで終わりにしたくないんですね。

 

マイケルとキャロリンの心の変化

 

キャロリン:「どこへ行ってたの?」

 

マイケル:「酒場で飲んできた」

 

キャロリン:

「ベティに電話を?」

 

「しなさいよ」

 

マイケル:

「ルーシーの話を聞いた」

 

「ディレーニーと結婚した女だ」

 

キャロリン:「最初の奥さんが亡くなって?」

 

マイケル:

「その後、ルーシーと再婚した」

 

「ずっと不倫の関係だった」

 

「最初のかみさんは冷たくてね」

 

キャロリン:「つまり、セックスで?」

 

マイケル:「母さんは違った」

 

キャロリン:

「ワイルドな都会にあこがれてたけど、アイオワも相当なものね」

 

「酔ってるの?」

 

マイケル:「これからさ」

 

兄弟は母のことを想いながら楽しく会話しました。

 

マイケル:

「僕は結婚してから浮気をしたことはない」

 

「そりゃ思うけどね」

 

キャロリン:

「これからは?」

 

「僕も母さんのマネを?」

 

キャロリン:

「私はもう40女なのよ」

 

「20年間ひどい結婚生活を我慢した」

 

「”離婚はいけない、我慢しろ”と教えられたからよ」

 

「セックスでアフリカへ飛んだことなんか一度もないわ」

 

「ただの一度もね」

 

「なのに良妻賢母のあのママがチャタレイ夫人だった」

 

マイケル:

「僕は、父さんより僕が裏切られた気がする」

 

「これは異常かな?」

 

「一人息子は言うなれば、一家の王子って存在だ」

 

「王子を産んだ母親は性欲を持ってはいけないんだ」

 

キャロリン:「やはり異常よ」

 

マイケル:

「不幸なら、駆け落ちっていう道は?」

 

「先を読もう」

 

「ここまでは何て?」

 

キャロリン:「ママは彼を寝室へ連れて行った」

 

マイケル:「父さんの寝室?」

 

キャロリン:「いいわ、そこは飛ばして、ここから」

 

マイケルは酒瓶を一気に飲み、読み始めました。

 

失うことの恐れ

 

フランチェスカの心の中:

「ロバートは横で眠ってた」

 

「私は眠れなかった」

 

「明日が来たら?」

 

「彼は去り、新しく知った貴重ですばらしいものは消え去る」

 

朝、フランチェスカはいらだちながら、ロバートが朝食を食べるのを見ていました。

 

フランチェスカ

「よく眠れた?」

 

「よかった」

 

「コーヒーまだいる?」

 

「一つ聞いてもいいかしら?」

 

「世界のあちこちにいる女たちとはどうしてるの?」

 

「時々は会うの?」

 

「どんどん忘れてしまうの?」

 

「時々は手紙を書くの?」

 

「どうするの?」

 

ロバート:「なんだって?」

 

フランチェスカ「あなたの決めてるやり方を知っておきたいの」

 

ロバート:

「決めたやり方だって?」

 

「ひどいな」

 

フランチェスカ「違うの?」

 

ロバート:

「決めるのは僕か?」

 

「夫を捨てないと決めたのは君だよ」

 

フランチェスカ

「駆け落ち?」

 

「人間は好きだけど、特定な関係は嫌いな人と?」

 

「何の意味が?」

 

ロバート:「僕は正直に話した」

 

フランチェスカ

「そうね、その通りよ」

 

「何も必要としない人だってことが分かったわ」

 

「じゃあ、なぜ眠るの?健康でしょ?」

 

「食べ物も要らないはずよ」

 

ロバート:「どうした?」

 

フランチェスカ「世界中を家と呼べるような豊かな経験の方ですものね」

 

ロバート:「僕の経験を知りもせず...」

 

フランチェスカ

「でも分かるの」

 

「孤独は謎だなんて言う人にここの暮らしが理解できる?」

 

「強がりばかり言って」

 

ロバート:「もうやめよう」

 

フランチェスカ

「わたしは一生ここで考え続ける」

 

「今、あの人と一緒ならばと」

 

「彼は今頃、ルーマニアの農場の主婦の台所で、世界各地の女友達の話を聞かせてるのかしら」

 

ロバート:「何を言わせたい?」

 

フランチェスカ

「何も言わないでいいわ」

 

「言う必要はないの」

 

ロバート:「とにかくもうやめよう」

 

フランチェスカ

「いいわ」

 

「卵?それとも床でファック?」

 

ロバート:「僕は自分自身を恥じてもいないし、間違っていたとも思わない」

 

フランチェスカ

「そういう人よ!」

 

「気分次第で傍観者で世捨て人でまた愛人にもなれる人!」

 

「我々は目をかけていただいた一瞬をありがたく感謝する!」

 

「孤独と恐れを感じないなんて人間じゃないわ」

 

「偽善者でウソつきだわ」

 

ロバートの本心

 

ロバート:「君が必要だとも」

 

フランチェスカ「本当?」

 

ロバート:「だが叶わぬ望みだ」

 

フランチェスカ

「だから抑えてるわけ?」

 

「お願い、ロバート、本当の気持ちを聞かせて」

 

「聞かないと気が狂ってしまうわ」

 

「正直に言って、どうしても聞きたいの」

 

「明日ですべてが終わってしまうんですもの」

 

ロバート:

「僕が君にこう思わせた?」

 

「僕が何度もこういう想いを経験していると?」

 

「そう思わせたのなら謝る」

 

フランチェスカ「何を言いたいの?」

 

ロバート:

「なぜ僕は写真をつくるのか、その理由はここで君と出会うためだった」

 

「僕の今までの人生は君と出会うためのものだった」

 

「なのに僕は明日去る」

 

「君を残して...」

 

フランチェスカ

「離さないで」

 

「どうすればいいの?」

 

ロバート:

「行こう」

 

「僕と一緒に」

 

そして、フランチェスカは旅の支度をします。

 

フランチェスカは悩み続けます。

 

板挟み、そして決断

 

ロバート:「行かないんだね」

 

フランチェスカ「何度も何度も考えたけど、正しくないことだわ」

 

ロバート:「誰に?」

 

フランチェスカ

「家族、皆に」

 

「町の噂に殺されるわ」

 

「リチャードは理解することができない」

 

「立ち直れないわ」

 

「誰も傷つけたことのない彼をそんな目に?」

 

ロバート:「それでも人は生き続ける」

 

フランチェスカ

「100年以上もここに居着いた農家で、よそでは暮らせない人よ」

 

「それに子供たち」

 

ロバート:「もう大人で話すこともなくなったと」

 

フランチェスカ

「話はしないけど、キャロリンはまだ16歳」

 

「今から男と女の関係を知る年頃よ」

 

「誰かに恋をして、いずれ誰かと家庭を持つ」

 

「そういう娘にどんな影響が?」

 

ロバート:「じゃあ、僕らは?」

 

フランチェスカ「分かってるはずよ、心の奥でね」

 

「今の気持ちは長続きしない」

 

ロバート:「そう、いい方に変わる」

 

フランチェスカ

「この家からどんなに遠くに離れようと、私の頭にはいつも彼らのことがある」

 

「そして、その苦しみをあなたのせいにする」

 

「そして、すばらしかったこの4日間までバカな間違いに思えてくる」

 

ロバート:

「僕らが感じているこの気持ちを経験する人間は少ない」

 

「もう一心同体だ」

 

「多くの人は経験どころかその存在も知らない関係だ」

 

「それを諦めることが、正しいことだと君は本気で言うのかい?」

 

フランチェスカ

「どういう選択をするかが人生よ」

 

「分からない?」

 

「そうでしょ?」

 

「女ならば結婚して子供を産もうという選択をする」

 

「そこから人生は始まり、同時に止まってしまうの」

 

「日々の些事に追われて、子どもたちが前進できるよう、母親は立ち止まって見守る」

 

「子供はやがて巣立っていって、さて、いよいよ自分の人生を歩もうとしても、歩き方を忘れてしまっている」

 

「そういう女にこんな恋が訪れるなんて」

 

ロバート:「でも、訪れた」

 

フランチェスカ

「だから一生大切にしたいの」

 

「この気持ちのままあなたを愛し続けるわ」

 

「ここを捨てたらその愛は失われる」

 

「新しい人生のために過去を消し去れと言うの?」

 

「心の中の私達を支えに生きていくわ」

 

「分かってちょうだい」

 

ロバート:

「こんな恋を捨てるのか?」

 

「そう考えるのはこの家にいるせいだ」

 

「明日、家族が戻ったら考えが変わるかもしれない」

 

フランチェスカ「どうかしら」

 

ロバート:

「僕はもう数日この町にいる」

 

「心を決めるのは先でいい」

 

フランチェスカ「ロバート、苦しめないで」

 

ロバート:

「ここで別れるなんて」

 

「まだ時間はある」

 

「気が変わるよ」

 

「話し合えばきっと変わる」

 

フランチェスカ

「その時はあなたが決めてね」

 

「わたしはとても...」

 

ロバート:

「一度だけ言う」

 

「初めて言う言葉だ」

 

「これは生涯に一度の確かな愛だ」

 

ロバートは出ていきました。

 

一心同体

 

もう一生会えないと思ったフランチェスカは走ってロバートを追いかけます。

 

そして、家族が帰ってきました。

 

目を真っ赤にしたまま、一瞬遠くを見つめた後、笑顔で家族を迎え入れます。

 

 

フランチェスカの手紙の中:

「あなたたちが戻ってまた日常の暮らしになった」

 

「2日ほど過ぎると日常の雑事が彼への想いを紛らわせ、あの4日間を遠いものにした」

 

「安全なホッとする思いだった」

 

ある雨の降る日、フランチェスカは夫と町に買い物に出かけました。

 

フランチェスカは雑貨屋で買い物を先に終え、車に戻ってきました。

 

すると、通りの向こうにロバートの車が止まっています。

 

ロバートは車から降り、ずぶ濡れになって、フランチェスカを見つめました。

 

フランチェスカは決死の目でロバートを見ました。

 

そして彼は数歩歩み寄り、二人は見つめ合いました。

 

フランチェスカは少しだけ微笑みかけました。

 

さようならとでも言うように...。

 

そしてロバートは優しく微笑み返します。

 

ありがとうとでも言うように...。

 

ずぶ濡れのロバートはゆっくりまるで死んだかのような顔でまばたき一つせず、車のほうに振り返り、去っていきました。

 

何とロバートの無様な姿でしょう。

 

孤独を好み、寂しさや恐れがないと言ったロバートの哀れな姿。

 

あなたはきっとこのロバートの姿に胸を打たれることでしょう。

 

この微笑みだけの言葉のない会話のなかに、どれだけの想いが二人の間に伝わっていたでしょうか。

 

イーストウッドメリル・ストリープの迫真の演技です。

 

後世に必ず残る名シーンです。

 

現世での別れ

 

フランチェスカはうなだれ、涙が止まりません。

 

そこに夫が帰ってきました。

 

フランチェスカの手紙の中:

「一瞬どこにいるのかを忘れた」

 

「彼はわたしをあきらめたというような足取りで、歩み去って行った」

 

ロバートの車をリチャードが追い越そうとした時、ロバートは割って入り、そのまま信号を待ちます。

 

リチャードの車はロバートの車の後ろに停車しました。

 

フランチェスカは一瞬も見逃すまいとロバートの後ろ姿をじっと見つめます。

 

フランチェスカの手紙の中:

「彼は物入れの方に手を伸ばした」

 

「8日前も彼はそうして、腕がわたしの脚に触れた」

 

「1週間前のわたしはドレスを買ってた」

 

ロバートはフランチェスカのペンダントをバックミラーに優しくかけました。

 

これからこのペンダントを君だと想って、独りで生きていくよと言っている風でした。

 

リチャード:

「遠くから来た車だ」

 

ワシントン州

 

「カフェで噂を聞いた写真家だな」

 

信号が青になりましたが、ロバートは車を進めません。

 

リチャード:「早く行けよ」

 

もう会えないと思ったフランチェスカは助手席ドアノブを強く握り、駆け出そうとします。

 

そしてドアノブを回転させ、今にもドアが開きそうでした。

 

リチャードはクラクションを鳴らしました。

 

その音でフランチェスカは我に帰りました。

 

リチャード:「出せよ」

 

ロバートはリチャードに促されるように、車を左折させました。

 

そのままリチャードは直進します。

 

ロバートが曲がる時、ロバートの顔が見えました。

 

フランチェスカはまばたきもせず、じっと見送りました。

 

フランチェスカはドアノブを握りしめていた手の力を抜きました。

 

フランチェスカの心の中:

「行かないと言ったわたしが悪いのよ」

 

「でも、行けないの」

 

「なぜ、行けないのか言わせて」

 

「なぜ、行くべきなのか言って」

 

「彼のあの言葉が聞こえた」

 

「”これは生涯に一度の確かな愛だ”」

 

リチャードは理由がわからず泣くフランチェスカを見て、

 

リチャード:

「どうした?」

 

「いったいどうしたんだ?」

 

フランチェスカ「すぐ落ち着くわ、リチャード」

 

フランチェスカはロバートに対して、

 

フランチェスカ「許して...」

 

と言いました。

 

家に帰るとフランチェスカはラジオの音量をあげて、部屋の隅で独り泣きました。

 

フランチェスカの手紙の中:

「沈黙がありがたかった」

 

「わたしは知った、愛は期待に答えぬことを」

 

「愛の謎は純粋で、しかも絶対的」

 

「ロバートと一緒になったら、愛は長続きせず、リチャードと別れたらその絆はたちまち消える」

 

「このことを家族に話せたら、話したら家族はどう変わってたか」

 

「あの美しさは理解されただろうか」

 

 

その後の生涯

 

フランチェスカの手紙の中:

「わたしとルーシーは親友になった」

 

「でもなぜか、あの話を打ち明けたのは2年後」

 

「でもルーシーといると安心して彼のことを考え、愛し続けられるように思えた」

 

「私達は町の噂など、気に留めなかった」

 

「お父様もね」

 

やがて年を取り病に伏すリチャードはフランチェスカに言います。

 

リチャード:

「フラニー、お前にはお前の夢があったんだろう?」

 

「それを与えてやれなかった」

 

「でもお前を愛している」

 

フランチェスカの手紙の中:

「お父様の死後、ロバートに手紙を書きました」

 

「でももう雑誌社を辞めていて、連絡先は不明でした」

 

「残されたつながりはあの日彼と行った場所」

 

「私は毎年、誕生日にその場所を訪ねました」

 

「ある日、彼の弁護士から手紙と包みが届きました」

 

そこにはロバートの遺品と彼女への手紙が入っていました。

 

愛用のカメラと、ロバートの著書”永遠の4日間”、彼のブレスレットとペンダントです。

 

本を開けると最初のページに、フランチェスカが夕食に誘ったメモが挟まれていました。

 

そして、最初のページには親愛なる”F”へ捧ぐと書かれていました。

 

ロバートの言葉”これは生涯に一度の確かな愛だ”は決してうそではなかったのです。

 

彼のブレスレットを身に付け、ずっと彼がかけていたペンダントをいたわるように優しく握りしめました。

 

ロバートの死を知ったフランチェスカ

 

どんな想いでペンダントを握ったのでしょうか。

 

ロバートもまた、どのような気持ちで生涯を閉じたのでしょうか。

 

「昔の夢はよい夢」

 

「叶わなかったがいい思い出」

 

と自分を納得させながら生きていたのだと思います。

 

キャサリンとマイケルは、母たちが飲んだブランデーを母たちが飲んだグラスで乾杯しました。

 

フランチェスカの手紙の中:

「彼を思わぬ日はありませんでした」

 

「彼が一心同体と言ったのは正しかったのです」

 

「私達は一体でした」

 

「彼なしでは長い歳月を農場で暮らせなかったでしょう」

 

この文で、子どもたちがロバートに”感謝”する理由が分かると思います。

 

この4日間があったからこそ、家族と向き合う決心がつき、ここの暮らしを我慢できたということです。

 

フランチェスカの手紙の中:

「あなたがほしいと言ったドレス」

 

「”ママが着ないから”と」

 

「でも笑わないでね」

 

「私にはウェディングドレスのように大切だったの」

 

「この手紙を読んで、火葬を望む理由が分かったと思います」

 

「老女のたわ言ではないのです」

 

「わたしは家族に一生を捧げました」

 

「この身の残りは彼にささげたいのです」

 

母への理解

 

マイケルは妻のもとに戻り、言いました。

 

マイケル:

「君は幸せかい?」

 

「それが僕の望みだ」

 

「なによりもね」

 

そして抱きしめました。

 

マイケルは母の気持ちを知り、妻が心配になったのでしょう。

 

面白いですね。

 

あなたは日常の生活に追われて、ついパートナーに対して単調で淡々としたコニュニケーションやスキンシップになってないでしょうか?

 

悪い言い方をすれば、自分の所有物のように、何も考えていないとお思いではないでしょうか?

 

すれ違いの始まりですね。

 

気にしてあげたいですね。

 

キャロリンは母の大切なドレスを着ました。

 

そして母に勇気をもらって、夫に連絡します。

 

キャロリン:

「あなた?わたしよ」

 

「元気よ、あなたは?」

 

「話があるの、今ここで」

 

「しばらくここで暮らすわ」

 

「いつまでかは...」

 

「何も怒ってないわ、スティーヴ」

 

「本当よ、怒ってないわ」

 

これがキャロリンの選択でした。

 

夫への愛情を再確認したのかもしれませんね。

 

フランチェスカの手紙の中:

「写真集はルーシーに預けました」

 

「興味があれば見て」

 

「わたしの言葉の足りない所は写真が物語るでしょう」

 

「それがアーティストの作品なのです」

 

「あなたたち2人を心から愛しています」

 

「恐れずに幸せを求めて」

 

「人生は美しいものです」

 

「幸せに、わたしの子どもたち」

 

そして、二人は心からの母の確かな気持ちを受け止め、ローズマン橋から遺灰を撒きました。

 

愛情をもって母をロバートの所に行かせてあげました。

 

愛のカタチ

 

フランチェスカは家族を傷つけず、思い出も美しいまま、この世を去りました。

 

ロバートを傷つけてしまったという罪悪感と彼についていきたいという抑圧を胸にしまいながら、ルーシーにだけは打ち明けて、生涯を閉じました。

 

あなたは今の妻や夫、恋人以外でこのような思い出がありますか?

 

過去にはあったという人はいるのではないでしょうか

 

それは今のパートナーや家族との愛情に負けず劣らず、輝くいい思い出なのではないでしょうか?

 

愛情ってなんて不思議なのでしょうね。

 

1つだけで存在するとはかぎらないですね。

 

あなたが人を愛した数だけ存在します。

 

一番大事な人だけれど、それをいい思い出のままにするという選択。

 

なんて人間は聡明であることか!

 

たった4日間だけ、彼女は自分のために生きました。

 

たった4日間だけですが、命をかけたこの恋愛が彼女のその後の人生に活力を与えました。

 

この4日間がなければ、その後の人生に耐えられなかったと言っています。

 

一方、ロバートもつらかったでしょう。

 

彼女を愛していたからこそ、苦しみながら人生を歩ませるのはかわいそうと思ったのでしょう。

 

恋愛とは相手が自分の一部分となる気持ちだと思います。

 

別離とはその一部分が離れることです。

 

こんな辛いことはありません。

 

フランチェスカはロバートのことを想わない日は1日もなかったと言っています。

 

雑誌の写真のロバートは首にフランチェスカのペンダントをつけていました。

 

ロバートも同じく、1日たりともフランチェスカを想わない日はなかったはずです。

 

若い人にはたくさん、恋をしてほしいと思います。

 

それがどれほど大切な思い出になるか、

 

年を経るごとに輝きは増すと思います。

 

人生を後悔しなくなります。

 

死期が迫っていても、あの思い出があるから、いい人生だったと思えるのです。

 

批判に耐えうるメロドラマの演出

 

そして、この作品のすごさはやはりその演出です。

 

  • 遺品整理から始まるストーリー
  • 遺言という形で母の生き様を伝えた事
  • 長男から見た母の恋愛の反応
  • 長女から見た母の恋愛の反応
  • 子どもたちの現在の境遇と重なるところ
  • フランチェスカの自由を求める気持ち
  • フランチェスカの聴く曲
  • フランチェスカの視線で心情が分かるカメラワーク
  • 家族とロバートのドアの閉め方の違い
  • 田舎の人の排他性とまっとうな暮らし
  • 家畜のいる家にいつもいる蝿
  • 自家用に乗るトラクター
  • 美しいローズウェル橋のラブロマンスの調和
  • 家庭的な人妻と孤独で自由な男の対比
  • 倫理観の象徴となっていた家庭的な食卓や寝室
  • フランチェスカとロバートに突き刺さる倫理観
  • 妻に逃げられて、田舎で暮らし続けるのは耐えきれないというリチャードへの思いやり
  • フランチェスカの誰も傷つけたくないという理性
  • 4日間を後悔させたくないための決断の聡明さ
  • どしゃぶりの中ずぶ濡れの哀れな姿のロバート
  • 初老のロバートの哀愁がある白髪と顔のしわと体つき
  • ロバートがフランチェスカに去らせずに、自分から去っていったという優しさ
  • 臨終のリチャードがフランチェスカに謝るシーン
  • 名演技のメリル・ストリープクリント・イーストウッド
  • 大人になった子どもたちに気持ちを知ってほしいという母心
  • 同じ境遇で苦しんでいるルーシーとフランチェスカの心の通い合い
  • 恋人の代わりのペンダントと思い出のドレス
  • ローズウェル橋で死後二人はいっしょになるという演出

 

名シーンのオンパレードのような映画でした。

 

愛を追憶することの価値

 

これほど悲しみがジーンと長く続く作品はありません。

 

長編物語を見てきたかのような、ずっと続く寂しさと切なさです。

 

ロバートが言った貴重な経験、

 

「僕らが感じているこの気持ちを経験する人間は少ない」

 

「多くの人は経験どころかその存在も知らない関係だ」

 

このような貴重な恋を、若い人にたくさんしてもらいたい。

 

そして、パートナーや家族がいる人は昔を思い返してみてください。

 

そういった思い出を掘り起こしてみてください。

 

それを思い返した時、今の生活をより価値のあるものに変えていけると思います。

 

是非とも、この作品を観てください。

 

観た方はもう一度見返してください。

 

人生のステージによっても見え方が変わってくるので、何度でも観てほしいです。

 

長い間、お読みくださり、ありがとうございます。

 

それでは、また次の作品でお会いしましょう。

 

さよなら。

 

 

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